森田さんは、入院した。

 ぶつかる間際に、ハンドルを右に切り、大事には至らずに済んだ。

 事故の次の日の朝、いつも通り事務所に行った。

 ボクより先に来ていた島田マンは、ボクの顔を見て、何故かホッとしたような笑顔を浮かべた。

 身体のことを聞くと、夜中に鼻血が出たらしかった。

 直後は、何ともなくても、後から不調が出てくるかもしれない。

 今なら、会社が保証してくれる。

 所長に、病院に行くこと、しばらく休むことを告げ、次の日から休みをもらった。

 病院に通い、アパートで休む。

 つもりだった。

 しかし何故か、この時は年に一度帰るくらいだった実家に戻った。

 この気まぐれが、ボクの身の行方を変えることになる。