堺からの仕事帰り。

 新人の島田マンを助手席に乗せていた。

 普段あまり物を言わない森田さんが、「島田マン』と話しかけたことで、島田くんは、いつの間にかみんなに島田マンと、呼ばれるようになっていた。

 誰もその意味を森田さんには、聞かない。

 いつもニヤニヤするだけだったからだ。

 その森田さんは、満載に積んだ4トントラックを運転して、ボクの空の4トントラックの後ろについて走っていた。

 時間の割には、比較的空いている道を、仕事が終わったせいもあり、気持ちよく走っていた。

 目の前には、若い女性の運転する黄色い軽自動車。

 目の前の信号が赤にかわる。

 このあたりの人は、赤になってからでも、1、2台は止まらずに行ってしまう。

 ところが、目の前の軽自動車は、急ブレーキを踏み、停止線を少し過ぎたくらいで止まった。

 慌ててボクも急ブレーキ。

 サイドミラーから、後ろを見ると、前の状況が見えない森田さんのトラックが突っ込んできた。

 荷物、満載のトラック。

 ボクは、ハンドルを握りしめ、腕を突っ張らせて、身体をシートに押し付けた。

 衝撃音とともに、シートベルトをつけ、助手席の上にあぐらをかいていた島田マンの身体は、起き上がりこぼしのダルマの如く、前後左右に揺れている。

 その上で揺れている顔の中の目は、どこを見ていいのかわからず、彷徨っていた。

 幸い、前の軽自動車にはぶつかることはなかった。