シートを起こし、シートを少し前に戻す。

 エンジンをかけ、わざとフットブレーキで、プシュッ、プシュッとエアの抜ける音を鳴らす。

 心地良い、ディーゼルエンジンの音と振動。

 機関車に対する感情と似たものが心に溢れる。

 違うのは、見るだけでなく、それを乗りこなせることだった。

 次に、アクセルペダルを軽くトントン、プシュー、プシューと排気ブレーキの音を鳴らす。

 トグルスイッチをオン。

 側面のマーカーランプ点灯。
 徐々に一体感が生まれてくる。
 正ちゃんは助手席で、すでに背もたれを倒し、足を投げ出して、リラックスモード。
 お互い気を遣わないのがいい。
 基本、ワンマンが好きだが、一緒に行くなら、正ちゃんが一番良かった。
 アクセルを踏み込み、エンジンの音が変わっていくのを感じながら、動き出すトラック。
 大きく、グリップの太いハンドルを少し大げさに回していく。
 航海の始まりだ。