新地にある一軒家。 

 2階に上がる階段は、狭くて急だった。

 元々、赤線だったのだろう。

 下で女性を選び、2階で行為をする。

 あたりは寂れてはいるが、本来の目的と違うボクたちは、長居は無用だ。

 東京くらいなら、昼間に別現場をこなして、昼から東京行きの荷物を積みに行く。

 今回は、距離があるので、朝からの積み込みとなっていた。

 階段を上がると、人懐っこそうな70代くらいの夫婦がみえた。

 持って行くものの、荷物の確認をして、正ちゃんと2人で荷物を運び出す。

 この当時、資材という資材はなかった。

 小型の電化製品は毛布でくるみ、家具類は平パッド(キルティングの当て布団)を被せる。

 運び出すときは、ハダカの状態だった。

 ボクはこの積込みも好きだった。

 荷物を見て、どの高さで積んでいくのかを判断する。

 今みたいに、ラッシングベルトなどなかったから、途中で荷物を固定することは基本できなかった。

 だから、勘で荷台の最後尾でおさまるように、積んでいく。

 それも、1列1列、できるだけ、荷物がフラットに並ぶように。

 凹凸があると、家具を積むときに、押さえが利かないからだ。

 自転車などは、積み上げた荷物の上部をできるだけ同じ高さで、3列くらい積んでいき、その上にコンパネ(合板)を引き、自転車を寝せてのせる。

 荷台の左右の壁の間に、キツキツに、荷物を並べていく。

 余りぴったりに並べると、走行中、荷物が遊んで、躍ってしまう。

 特に、後輪の軸の上の荷物ははねやすくなるので、注意が必要だった。

 今では、ほとんどのトラックがエアサスだから、そんな心配はいらないのだろうが………。

 2時間もかからないうちに、4トン一車積み上げる。

 このまま走ってもよかったが、一度事務所に戻り、正ちゃんと夕方5時に待ち合わせた。

 毎日のように行く飯屋で、瓶ビール2本とうどんを食べ、アパートに戻り、1時間ほど寝た。

 起きると銭湯に行き、さっと体を洗い、アパートに戻ると、使うかわからない着替えの入ったカバンを持ち、事務所に行く。

 エンジンをかけ、背もたれを倒して、ボーッとしてると、少し遅れて正ちゃんがやってきた。