京都駅を過ぎる形で、四条大宮まで、時間をかけて、やってきた。
特別目的はなかった。
北に行けば二条城だなと思いつつ、そのまま西へと歩みを進めた。
京都に来た安堵感からか、旅の疲れが出始めていた。
その身体で、観光客の歩みに合わせて進みながら、広い二条城を歩きたくはなかった。
いままで、足を運んだことのなかった壬生寺を覗くことにした。
思った通り、人もまばらで、身体も気も落ち着けるには、いい塩梅だった。

境内に入ると、懐かしいものが目に入ってきた。
ここで見るものは、もちろん初めてだったが、徳島の眉山山頂にあるものが、ここにもあった。
ミャンマー形式の仏塔だ。
パゴダ。

【徳島のパゴダ】
徳島のものは、戦死者の慰霊碑だったが、京都のものは都市計画の時に、あちこちの石仏が集められて、作られたものらしかった。
新選組、壬生狂言。
そして、パゴダ。
3000体あまりの石仏に、奥深さを感じた。
予定の時間通り、弟と京都駅で落ち合う。
まだ、学生だった弟に行きつけの店などもなく、数回、バイト先の人に連れて行ってもらったという飲み屋に行った。
その店は、5階建ての雑居ビルの5階にあった。
エレベーターが、あるのは助かる。
一度、地方の飲み屋で帰り際、千鳥足をとられ、階段を転げ落ちたことがあった。
今晩、階段を落ちるようなことが有れば、新選組の仕業に違いないと馬鹿なことを考えつつ、店に入った。
料理自慢のスナックといった店で、6人くらいの常連客とおぼしき大人たちが、楽しそうに飲んでいた。
ビールを頼む。
あては、鱧の湯引き、生麩田楽、すぐき漬け。
偏食だったボクは、決まったものしか頼まない。
締めは、帰り道にラーメンと思っていたが、鯖寿司があった。
これで決まりだ。
珍しく酔いが回り、お腹も落ちついてきた。
一息つこうと、店の窓から外を見ると、遠くに五山の送り火が見えた。