朝早く、バスは終点に着いた。

 駅を抜け、表側に出ると、見慣れた街並み。

 この当時、駅ビルも含め、まだ風情があった。

 あるテレビ番組で、4割ほど観光客が少なかったと、見たことがあったが、体感的にはもっと少なかった気がする。

 神社仏閣など行かなくとも、京都にしかない趣が感じられ、仏様に拝顔して手を合わせるゆとりもあった。

 京都の歴史が、優しく厳かに一人ひとりを包んでくれた。

 バスに乗り、東山に向かった。

 バスを降り、坂道を登る。
 一歩一歩の歩みが、いつもどおり、気分を高揚させる。
 桂浜で会ったあの人が、この先に眠っていた。

 いつもは11月15日に来ていた。
 彼の命日で、神社の入り口付近で、高知県人会の人たちが、軍鶏鍋を振舞ってくれた。
 志しを箱に入れ、寒い中、亡くなる日に食べる予定だった軍鶏鍋に舌鼓を打った。
 京都に憧れ、大阪に住みついた。
 嫌な部分は、見たくなかったからだった。
 地元にいるときは、毎週通った京都だったが、近づいてみると次第に足は遠のいていった。