気の抜けた炭酸飲料が、好きな友人がいた。

 味の好みは、人それぞれだと、ボクは一度だけ試したことがあった。

 人それぞれ、好みがある。

 寝起きの温く、気の抜けたビールは、昨晩の深酒の、乾いた喉を潤してくれた。

 昨晩、部屋に戻ると急に酔いが覚め、両隣の部屋の人の気配が気になって、寝付けなかった。

 カバンに押し込んでおいた、いざという時のための、トリスのポケット瓶。

 キャップを乱暴にあけ、ストレートで口中に放り込んだ。

 体に染み渡る間もなく、胃が焼けた。
 慣れ親しんだ香りが鼻から抜けていった。
 高校生の頃、常に学生服の内ポケットに裸で入れ、持ち歩いていた。
 ハイライトは、どうしてか、シガレットケースに入れ替え、持ち歩いていた。

 数年前と違うのは、ハイライトも買ったままの状態で、ポケットに入れて持ち歩くようになったことと、ZIPPOのライターが百円ライターになったことだった。
 どれも半分も吸っていない、 アルミの灰皿の3本の吸い殻を見ながら、今晩の寝所はケチらないでおこうと決めた。
 ろくすっぽ、くせ毛の髪を直すこともなく、宿を出ると、まだ人気のない気持ちのいい朝があった。
 人で、ごった返す時間が来る前に、電車に乗ろうと、駅に向けて歩みを早めた。