かすかに明るくなるのを感じ目を開けた。

 妻に声をかけ、車を走らせた。

 国道には、雪がなかったので気が付かなかったが、道を一本入ると薄っすらと雪が道に積もっている。

 緩やかな坂道をしばらく行くと、目的地についた。

 特別興味があったわけではなかったが、余り人がいかないであろう観光スポットが好きだった。

 余り期待はしていなかったが、期待通りで酒天童子の里と聞いてはいたが、国宝の「童子切」があるわけでもなく、間が持たない建物内の空気感が、ボクは好きだった。


 ぶらっと、寝起きの散歩をしている気分で建物内をまわり、市内に戻った。
 お目当ての福知山城に登城して、福知山の町並みを眺めた。
 城好きと豪語しているのだが、ボクの福知山城に対する関心はこれで満たされた。
 どの城も基本そうだった。
 天守閣まで登れば、満足した。
 建造物のない城巡りをするようになるのは、もう少し後のことだった。
 今思えば、妻はよくこんな急かせかした旅に付き合ってくれたものだ。
 妻が亡くなり、もっとゆっくりのんびりと見て回れば良かったなと思う。
 福知山市の商店街に足を伸ばした。
 別に用はなかったのだが、もう少し街の雰囲気を感じたかった。
 よくあるシャッターが降りた商店街。


 開いている店を覗くと、空いている店のスペースに、地元の鉄道に関する品物が並べてあった。
 展示と言うには言い過ぎで、置いてあると言うには少し失礼があるようなスペースだった。
 今晩は、夕日ヶ浦温泉の旅館に泊まる。
 たまたま見かけ、たまたま1周年記念で、一泊一名2食付一万円となっていた温泉旅館だ。
 旅館までの道中、ドライブを楽しみながら夕方5時くらいに宿についた。
 駅前のビジネスホテルの方が好きなのだが、せめてもの嫁孝行だ。
 部屋に案内され、建物の違う大浴場で温泉に浸かり、部屋で夕食。
 一品、一品出てくるこれまたボクの性格には合わないパターンだったが、意外なことが起きた。
 出てくる料理がどれもこれも口に合った。
 次は何が出てくるだろうと、楽しみにした料理はあとにも先にも、今までここしか経験がない。
 ボクにしては、ゆっくりとした時間を楽しんだ。
 カーナビを好まないボクは、座卓に地図を広げ、昨夜から今日まで、そして明日のルートを目で追ってはワクワクしていた。