山の奥深くへ
(※一部文章が間違えていましたので修正しました)
十数年前のこと。
標高数百メートルほどの山の奥深く、軽トラックで道なき道を揺られながら、ある依頼のために山頂付近まで登ったことがあります。
途中、山腹に人知れずぽっかりと開けた場所があり、そこには透き通るように美しい池がありました。
その池には――男性には絶世の美女に、女性には美男子に見える“木の精霊”が棲んでいたのです。
以来、私は年に一度、その山を訪れていました。
池を埋めた一族
ところがある年、その池が埋められ始めたのです。
依頼者に尋ねると、その山の中腹の土地の持ち主が、どうやら廃棄物や山土を運び込み、池を埋めているとのことでした。(依頼者とは関係ない地権者)
私は言ったそうです。
「そんなことをしたら大変なことになります。命だって取られるかもしれません」
正直、自分でもその言葉を覚えてはいません。
しかし、依頼者は「あなたがそう言っていた」と語っていました。
そして起こったこと
翌年、依頼者とは関係無い、その土地の地権者の若い奥さんが亡くなったと聞きました。
数年後には、旦那さんまでも……。
池に棲んでいた木の精霊は、安らぎの場を奪われ、怒りと悲しみに染まりました。
廃棄物と山土に覆われたその場所で、精霊はやがて“妖怪”へと変わっていく。
時の流れと報い
今年、久しぶりにその山へ行ってきました。
あの池の跡地は、なんと行政指導が入り、埋めたものを取り除く作業が始まっているとのことでした。
しかし――
一度壊された自然が元に戻るには、どれほどの時間が必要でしょうか。
人の一生分では足りないかもしれません。
そして、あの池を埋めた一族は……
きっと、時の流れの中で静かに途絶えていくのでしょう。
自然は生きている
自然はただの風景ではありません。
そこには精霊が息づき、長い時間をかけて築かれた“調和”があります。
それを人間の都合で壊すと、いつか必ず「何か」が戻ってくる。
あの池に棲んでいた木の精霊の怒りはは、今もあの山に、響いています。
シックスセンス管理人
