こころが浮かない気持ちになったとき、「ボクのアルバムを聴いてご覧」と彼は囁いてくれた。
いつだって、わたしのこころを温かく熱くさせてくれた。
聴く人のこころを温かく包み込んで高揚させてくれる音楽史上に燦然と輝く超名盤だ。
長いときをこのアルバムと過ごしてきたけれど、時代の流れと関係なく輝いている。
音楽の世界遺産にすべきだという声すらある。
「シングルが支配的だったモータウンから登場した、圧倒的に優れたフル・レングス作品であ
り、ほぼ間違いなく史上最高のソウルアルバム」とも評されている。
アメリカの音楽誌『Rolling Stone』が選出した『音楽史上、最も優れた500枚のアルバム』の第
6位だ。
どうしてこれほどの傑作が生まれたのか。
シングルの1曲目『What's Going on』が有名だが、全ての曲が繋がって流れている。
それぞれが美しいメロディだ。全曲を聴いて感動する。
日本で一番知られているのは、ダイアナロスとのデュエット『You are everything 』 だろうか。
このアルバムが革命的なのは、初めてアーティストにセルフ・プロデュースを許可した作品。
社会的メッセージを盛り込んだコンセプトアルバムという点。
デュエットのパートナーだったタミー・テレルが脳腫瘍のため24歳で急逝したショックで
30歳の彼は、対人恐怖症に陥った。
愛するひとの死の悲しみと、弟のベトナムでの悲惨な戦争体験を手紙を読んだことが
彼のこころに火花のように新しいインスピレーションをもたらしたのだろう。
彼は悲しみから、立ち上がる。
ベトナム戦争に反対する曲『What's Going on』
<この世界はどうなっているの?。何が起こっているの?>をモータウンの専属作家とフォー
トップスのメンバーと書き上げる。
モータウンの社長はシングル化に反対したが、彼は押しきりアルバムもセルフプロデュース
して完成させた。
2曲目の『What's Happening Brother』も弟に捧げられた反戦歌で、アルバムを通じて貧困、
ドラッグ、秩序の不安、警察の横暴、児童遺棄というアメリカの社会問題を歌い上げる。
世界中の子どもたちが明るい未来を迎えられないのではないかと心配する彼の思いも伝わっ
てくる。
マービンが哀しく、かつ希望の光を求めるように歌う。
高らかに盛り上げる前半のコーラスが心地よい。
『ねえ母さん
たくさんのひとたちが涙を流しているよ
兄弟達が次々と死んでいくよ
更に多くの兄弟達が命を落している
僕たちの手でなんとかしないと
ここに今、愛をもたらすために
ねえ父さん
もうこれ以上戦争の被害を広げないで
争いが解決にならない事なんて
愛だけが憎しみに勝つ
なんとかして見つけ出そう
この世界に愛をもたらす方法を
愛しい思いを届けるすべを
デモ隊の行列
数え切れないスローガン
暴力で押さえつけないでくれ
話し合えばきっとわかる
ねえ、この世界はどうなっているの?。何が起こっているの?
ねえ、世界はどうなっているの?』
マービンは、アルバムジャケットの写真のように苦悩しながらも穏やかに訴える。
この革命的なアルバムの考え方は、後にスティービー・ワンダーが受け継いでいく。
9.11のときは、多くのミュージシャンが集ってこの歌を歌った。
U2のボノ等、多くのミュージシャン与えた影響は計り知れない。
このアルバムはトランプは大嫌いだろう。
彼は武器を売りまくっているからだ。
マービンは歌っている。『話し合えばきっとわかりあえる』と。
今、ホンジュラスの移民たちがアメリカ国境に集ってきている。
もちろん、問題はそれだけじゃない。
黒人差別が終ったわけじゃない。人種差別だけじゃない。
日本でも差別や虐待は続いている。
彼も父から児童虐待を受け続けた。
グラミー賞まで授賞したが、牧師の父親にマービンは、撃ち殺されてしまう。
わたしはいまだにこのことを受け容れることができない。
常日頃から父は、母と彼に暴力を振るっていたらしい。
マービンと父は、母への暴力に対してよく口論していたようだ。
そして、エスカレートした口論の結果、84年4月1日
マービンは父の手で銃殺されるという悲劇的な終わりを遂げた。
44歳だった。
なんという悲劇。父は牧師だというのに。
彼は今でも天空からわたしたちに語りかけていると思う。
『世界はどうなっているんだい?』
彼の音楽と歌の輝きは永遠だ。
彼の歌にこめた叫びを受け入れよう!。
『愛だけが憎しみに勝つ
なんとかして見つけ出そう
この世界に愛をもたらす方法を』
彼の願いに、まだ答えが出ているとはいえない。
それでも、少しずつ変える努力をしていこう。
一歩前に進むために。彼の歌を聴きながら。
<怒り>を増幅させようとしている権力者たちのいいなりになってはいけない。
愛だけが憎しみに勝つことを証明するために。
全てのひとたちとともに。

