魂の高揚、あるいは意識を変える革命の風のようなものがわたしを急速に惹きつけたのかもしれない。
時々、無性にフランスの詩人アンドレ・ブルトンのことを書きたくなる。
いつだって、こころのなかにいるひと。
それがブルトンだ。
「美は痙攣的なものだろう。さもなければ存在しないだろう」
その言葉を聞いただけで痺れるのも変わらない。
今回、ブルトンやシュルレアリストたちがパリで活動した記録を纏めた本が出版された。
シュルレアリスムとパリは切っても切れない関係にある。
「すなわち、その発祥地であるパリなくしては、シュルレアリスムは、理解されることも、感知されることもない。」(アンリ・ベアール)
わたしもパリに2度訪れたが、ブルトンが歩いた場所が多い。
この本は、シュルレアリストたちが住んでいたアパルトマン、
集っていたカフェの位置や名前。
パフォーマンスを起こした場所。
ブルトンとナジャが歩いた通り等まで含まれている。
また現在その場所はどうなっているのかまで現地で確認した地図化までした画期的な本だ。
ひとつのグループが行動した場所について書かれた本は初めてではないのか。
ずっと待っていた。とうとう出たのかという感慨がある。
この本を編纂された松本完治さんは、ブルトンの著作を翻訳されていたフランス文学者の生田耕作さんの弟子といっていいだろう。
2年前にアンドレ・ブルトン没後50周年のイベントでお会いし、少しお話ができた。
海外のシュルレアリスムの著作を黙々と翻訳し出版されている真の伝道師だと思う。
ブルトンの美への情熱は、後期の大著「魔術的芸術」に集約されていく。
彼のオブジェや絵画への愛情は尋常ではない。
書斎には、キリコやシュルレアリストの絵画が並んでいた。
ギュスターブ・モローについては、偏愛のようなものを感じる。
次回パリへ行った際には、ギュフターブ・モロー美術館へ行くつもりだ。
この「妖精とグリフォン」が好きだったこともわかった。
美術館がブルトンの自宅の近所だったことがこの本でわかる。
わたしは、ブルトンの「ナジャ」を読んで体中に電流が走るような感動を覚え、熱い気持ちでパリへ行った。
幾つかの墓地をまるで何かにとりつかれたようにブルトンの墓を探し回った。
その内容については、「アンドレ・ブルトンとの出逢い 全5回」を読んで欲しい。
出逢いは、路地を曲がったらぶつかってしまった人との縁は何かあるのではないかと実験をしたことがあった。
出逢いが必然であるかどうかはわからないにしても、ブルトンが「ナジャ」を書いたことで、わたしは2度パリへ行き、ふたりの世界を確認していた。
その作業ほどドキドキしたこともないだろう。
いつしかブルトンの思想を伝えようという使命感が生まれてきた。
今もその気持ちは変わらない。
いまだに彼の墓のそばにいた時間を忘れることはできない。
人生で生涯忘れられないときと場所をと聞かれたら、このときと答えるだろう。
誰よりも強い意志を持ち、精神の自由と愛を求めるブルトンの思想がわたしを惹きつけたのだ。
続く。


