サモトラケのニケは、わたしのプロフィールにある彫像のこと。
いつも大切なことを教えてくれる最も愛する彫刻作品。
初めてパリへ行ったとき、憧れのルーブル美術館に入った。
一階から二階への踊り場を見上げるとその彫像は実に堂々としていた。
ルーブルはミロのヴィーナスというイメージだったけれど、
見た瞬間に圧倒されていた。
階段を登りながら、こちらへ向って翼をひろげた彫像が立っている。
近づいていくと、顔も手もないけれど、何かの大きな意志を感じるといえば
いいのだろうか。
踊り場に立ち、彫像を近くで眺める。
横から見ると、船の穂先に立ち、今にも翼を広げて飛立とうとしているようだ。
右足が前に出ている。
姿勢はあきらかに前のめりだ。
翼は生きているように、石とは思えないほど細かく彫刻されている。
ニケが着ている衣装も柔らかい感触で表現されている。
風になびいているようだ。
女神の上には天窓から光が差し込んでいる。
見事な配置だ。
どの角度から見ても美しい。
優美でありながら、力強さを感じる。
ダイナミックなのだ。躍動感がある。
この勝利の女神ニケを見ていると、
どんな苦難があっても乗り越えようという<強い意志>を感じる。
この作品が偉大なのは、そこではないのか。
造形の美だけではない。
紀元前二世紀のサモトラキ島にあり、神々の神殿にある船の船首に立っていたらしい。
海戦の勝利を記念するため、ロードス島民が奉納品として献上したという説もある。
だからニケは勝利の女神と言われているのかもしれない。
そして、風の勢いに負けないという姿勢は、風に立ち向かっているようにも見える。
ニケの像は、これから飛翔しようとするイメージが大好きなのだけれど、
立ち向かうダイナミズムにも魅了される。
世界中のひとたちが、ニケを見ようと集まってくるだけの理由がここにあるのだろう。
世界遺産そのものだと思う。
人類が作り上げた美の最高傑作であり、わたしたちに何が美しいかを教え、
勇気を与え続けてくれた作品なのだと思う。
映像でじっくり見て欲しい。
Nike (Winged Victory) of Samothrace, c. 190 B.C.E.
わたしたちは、東日本大震災の復興の過程にある。
福島原発の問題もある。
長い時間がかかりそうだ。
資本主義経済の混迷化や超高齢化等よる社会の縮小化等によって、先がよく見えない。
希望を簡単を見つける事が難しい世界に生きていると思う。
答えは簡単に出ない。
思い出そう。
わたしたちがあのニケを作ることができたということを。
だから、新たな未来を構築できるはずだ。
あきらめてはいけない。
あのニケの右足のようにほんの少しでもいいから、一歩踏み出して歩いていこう。
きっと、なにかが見えるはずだと信じている。
その証拠がニケのなかにあるだろう。
いまも、多くの人たちが美への感動とそれ以上のある何かを感じているのだと思う。
わたしたちがまだ困難を乗り越える力を持っていることを彼女は教えて続けてくれるのだ。
未来への飛翔と自由と、わたしたちの持っているこころへの信頼を。