またここへ帰ってくることができたよ。

あれほどのことが続けば、以前と同様

に生きることは難しいのかもしれない。

それでも帰ることができたことに感謝

しなければならないと思う。

ここに来るために生きていると言って

も大げさではないとすら思う。


山の麓に咲く美しさは、ひとが近づく

には急な上り坂を歩かなければないら

ない。

今のわたしには、やはりきつい。無理

かと感じていた。

でも、あなたたちのおかげでもある。

今生きていることに感謝。そして、

一日一日を大切に生きていこう。


がんになると筋肉細胞から攻撃される

ので、筋肉が減少し体重が落ちていく

らしい。

抗ガン剤の副作用は使用していた直後

だけでなく、その後の生活にも様々な

影響を残すようだ。


昨年10月、治療が終わってから丸1

年なので、再発について検査をした。

再発はしていなかった。まずはほっと

した。

主治医の発する最初の言葉は、生きた

心地がしないものだ。
 

そして2年目の検査は今年10月に

ある。この結果で再発がなければわ

たしは、解放されるのだろうか。


「再発の不安」にさいなまれて毎日

を悶々と過ごしているひとが多いそ

うだ。

大体2年目で寛解かどうかが見える

らしいが、わたしもそのひとり。


未だに、体調が上がってこない。

毎日のように口から出血することが

あり、様々な症状が起きて病院へ通

う。

幾つかの診療科で診察したところ、

歯科で歯周病と言われ、治療をしてあ

る程度よくなった。

新しい症状のモグラ叩きも疲れが溜ま

って来たので、コロナがある程度落ち

着いてきたこと、そして春の風を感じ

て4月からスポーツジムでのトレーニ

ングを復活してみた。3年ぶりだろう

か。

 

何かが蘇るような感覚を覚えて嬉しか

った。少しずつ体調が戻ってきて欲し

い。もちろん、焦らずに。


最近、あの決して忘れることのできな

いパリのノートルダム大聖堂の火災に

命がけで立ち向かった消防士たちの映

画が公開された。

なんとあの大火災のなかで、奇跡のよ

うに誰ひとり死者を出さなかったのだ

という。


消防士は仕事のためだけに、人類の美

の遺産を守ろうとしたのだろうか。

それだけではないだろう。そこには、

それぞれの限りない愛があったのだ

ろう。


函館では上映されないので、残念な気

持ちでいたら、「あの大好きなノート

ルダム大聖堂に逢いに行けばいいじゃ

ないか」という囁きが聞えた。


随分前のことだが、パリのパティニョ

ールにあるアンドレ・ブルトンの墓の

前に立ち尽くしていたわたしのことを

、思い出していた。

 

これからのこと。食べたい物や好きな

ことをすること。人間としての感覚の

原点のようなこと。

生き続けていくために、それらが

とても大切なことかもしれない考えて

いた。


その際は、あのシュルレアリスムの詩

人アンドレブルトンの書斎にあった一

部の書籍やオブジェや絵画等が残され

ている現代美術館のポンピドーセンタ

ーへ行きたい。

但し、センターは現在改修工事中で2

026年末には工事終了するようなの

で、それまで準備だ。

27年には新しいセンターで見ること

ができるだろうか。
 

 

憧れ続けたブルトンの遺品たちよ!。

生涯愛し続けているこれらに再び出逢

うことがわたしの命の灯を消さない

ために必要なのかもしれないと。

 

これからも愛し続けるために。



 

桜の妖精の囁きが聞えたような気がし

た。

「あなたがほんとうにしたいことをす

ること。簡単なことではないかもしれ

ません。

しかし、その道筋の中であなたに新し

い気づきが生まれるでしょう。

楽しみにしていますよ。わたしは、い

つもあなたのこころなかにいることを

忘れないでくださいね。待っています

。」


「春風の花を散らすと見る夢はさめて

も胸のさわぐなりけり」西行


「人間は孤独に徹した時、はじめて物

が見えて来る。人を愛することができ

る。」白洲正子