前回の映画『あん』の記事ですが、ジャンル人気記事ランキング(映画レビュージャンル)

で3位になりました。

これもみなさんのおかげだと思います。徳江さんも微笑んでくれているかな。

ほんとうにありがとうございます!。

 

今、読書の秋。

今回は、わが師、松岡正剛さんが以前作った雑誌『遊』に<読む>という特集があって、

その中の<セイゴオが選ぶ365冊>のコーナーがとうとう書籍化された。

 

 

これは伝説のブックガイドとして有名で、『千夜千冊』の元になったもの。

 

名前は、『遊読365冊 時代を変えたガイドブック』

 

 

知らない人も多いと思うので、よくぞ出版化してくれたと思う。

最近、松岡さんの千夜千冊が『千夜千冊エディション』として続々と文庫化されている。

涙がでるほどうれしい。

 

もともと読書はゾクゾクするものだ。<知>を知る喜びだろう。

初めて松岡さんが書いた1冊100字の紹介文を読んだとき、経験したことのない興奮を感じた。

全冊読破しようと決意し、書店で本を探しまわり読み漁った。
絶版本は、神保町の古書店街を歩き回り、結局半分程度を手に入れ調査と読了で2年かかった。


本にここまで夢中になって格闘したことはなかった。

おかげで、奇跡のような体験をした。

あの時間がなかったら、今のわたしはいない。

今でも座右の書物たちだ。

難解本も多いが、なおさら勉強になった。

ここで会わなければ、一生読まなかったものも多い。

 

大きな影響を受けた本に絞ってみた。
紹介文は名文中の名文だ。
興味を持たれたら、これらの宝石に会ってほしい。

今でも未知の原石が輝き続ける宝の空間だ。

 

松岡さんの紹介文も一部記載する。わたしの感想も加えよう。

選書は12のコーナーに分かれている。

「 」内は松岡正剛さんの紹介文の一部だ。それ以外はわたしの言葉。

さあ、はじめよう。

 

■1-読書はイマジネーションにはじまる

 

フレドリック・ブラウン  

『宇宙をぼくの手の上に』  

「どんな本嫌いをも治癒してしまう」

 

稲垣足穂   『一千一秒物語』  

「これは入門であって出門の一撃だ。それほどに完成度が高い。」

<ある夕方、お月様が自分をポケットに入れて歩いていた>。これがタルホの魅力

 

ピエール・ド・マンディアルグ  『大理石』

「イマジネーションがこれほど正確に連鎖する作品は珍しい」

いつも手の届くところに置いてある本。妖しく輝いている。

 

夢野久作   『ドグラ・マグラ』

「たった一瞬のうちにどれほど膨大なイメージの嵐が通り過ぎるのか」

 

スティーヴン・キング  

『シャイニング』 

真の恐怖を感じたいなら、この本を読みたまえ。映画より恐い。

 

寺田寅彦      『寺田寅彦随筆集』  「懐手して宇宙見物するように読む」

 

アーサー・ケストラー  

『偶然の本質』

「偶然こそ本質である。」 シンクロニシティについて書いた本。

 

ライアル・ワトソン  

 『未知の贈りもの』  

「この本を読んで魂が浄化されない人はいまい」

 

ジェラール・ド・ネルヴァル  

『ネルヴァル全集3』

いまだに<オーレリア>ということばの美しさに取り付かれている。

 

カルロス・カスタネダ   

『呪術師と私』

「インディアンの呪術師に導かれた人類学者の驚くべき供述の書」

 

E・A・ポオ   『ユリイカ』 

ポオは、短編小説集がもっとも恐い。

絶対に夜に読んではいけない!。

 

J・G・バラード  『時の声』   「これほどイマジネーションが鍛えられる本はない」

 

■2-読書は男のケンカだ

 

山本周五郎  『正雪記』 

 「男一生の反抗とは何かをふと考えさせられる」

 

埴谷雄高

 『幻視のなかの政治』  

 政治の本質はここでわかる。

そして<死霊>の世界へ移りたまえ。あっは!。

 

施耐庵  『水滸伝 上・中・下』

松岡正剛が雑誌『遊』を作ったときの工作舎は別名<梁山泊>と呼んでいた!。

 

ロジェ・カイヨワ 『戦争論』   

戦争とは何かと考えたいならここへ戻ること。


■3-読書が記憶の気配をふるわせる

 

レイ・ブラッドベリ  

『何かが道をやってくる』

「われわれは今日も明日もドキドキした一日を送るべきなのだ」

 

F・フェリーニ   『私は映画だ』

 天才フェリーニの本音が溢れている。

世界最高の監督の貴重なインタビュー。

 

大岡昇平   『野火』  

 「日本文学絶対必読は折口信夫『死者の書』と稲垣足穂『弥勒』とこの野火」

 

柳田国男   

『日本の昔話・日本の伝説』

 日本を知ろうとするひとへの入口です。柳田先生。

 

折口信夫  『死者の書 折口信夫全集・24』  

日本の源を探求した学者の究極の一冊

 

『聖書』   

 聖書をしっかり読まずして世界はわかりえない。

まずは旧約のヨブ紀と格闘してほしい。

 

白川静   『漢字の世界 1・2』  「僕が東洋に自信を持てたのはこの本のおかげだ」

 

アンリ・マスペロ   『道教』

「僕はこの本で中国産の精神の技術史があることを知り、そのままタオの黄昏の方へ傾倒していた。」

 

■4-読書で自分をあらためて知る

 

吉本隆明  『心的現象論序説』  

こころについての探求は、まずはここから格闘してほしい。

脳とこころと死について徹底して考え続けたのは、吉本さんだけではないのか。
根拠なしの思想はない。見破る力を鍛えることも必要だ。

 

■5-読書は見るものかもしれない

 

マックス・エルンスト  

 『百頭女』  

コラージュの魅力はここから始まる。

 

マン・レイ  

 『マン・レイ写真集』 

 マン・レイとは誰か。いずれ書く予定。

 

佐和隆研編集  『仏像図典』 

 日本人ならば仏像とは何かを知るための一冊。

 

藤原新也   『西蔵放浪』

<東京漂流・メメントモリ・全東洋街道>も人間の本質を抉る写真家の傑作。

何度号泣したかわからない。  

 

杉浦康平+松岡正剛   『ヴィジュアル・コミュニケーション 世界のグラフィック大系・1』   

大天才 杉浦康平が集めた世界中の不思議なデザインを集めた本。

日本にどれほど残っているのか。絶対に探して見る価値のある本。 

 

■6-読書でジャパネスクに耽る

 

西田正好   『日本美の系譜』  「日本の謎は魂の謎だ」

 

唐木順三   『中世の文学』

「スキは数寄であって透くまた漉くであってやがてスサビに流れ合わさる感覚である。

長明・兼好・世阿弥・一休・芭蕉を説いて名著の風評が高い」

 

岡倉天心  『茶の本』 

「単なる茶道の本ではない。かつて日本人が語り得た最高級のイメージコスモスの本である。」

 

(森本和夫編集)   『風狂 一休・芭蕉・源内ほか』

「まず何よりも一休の「狂雲集」に一目通してほしいところだ。」

わたしが一休宗純にほれ込んだのは、ここに始まる。そして水上勉の「一休」へ。 

 

白州正子   『十一面観音巡礼』 

白州さんの日本の美への造詣の深さとその厳しさに絶句した。ここから座右の書<西行>へ行く。

 

■7-読書が生命と宇宙の謎をとく

 

S・ワインバーグ  

『宇宙創成・はじめの三分間』

 宇宙の始まりのプロセスを初めて知った。さて終わりは?。

 

W・ハイゼンベルク 

 『部分と全体』

「稲垣足穂が本書をまるごと写して死んでいった。何だろう。

ハイゼンベルグもこの本を最後に死ぬ」

 

カール・セイガン  

『エデンの恐龍』

人間の脳・動物の脳について明かした画期的な本。人類は動物であるところから始めよう。

 

ライアル・ワトソン  

『スーパーネイチュア』

「何事も単独では起こらない。では何と何が関係しあうのか」

 

■8-読書は大いなる遊戯である

 

小栗虫太郎  『黒死舘殺人事件』

 「世界の全推理小説をこの一冊で打ち切ろうしたかと思わせる偏執的大交響曲あるいは観念の大空中楼閣だ」

 

松岡正剛編集+杉浦康平造本 

『全宇宙誌』   

日本出版史上の奇跡と言える本。絶対に再販は不可能。一生かかっても探す価値あり。

古書店も必死で探している。一生に一度は見て欲しい。

 

■9-読書を荒俣宏にまかせてしまう

 

D・D・ルージュモン 

『愛について』

 「キリスト教と愛の神秘的性格をこれほど興味深く書き通した本は、他に類を見ない。

それ自体が魔書である。」

 

ボリス・ヴィアン  

 『うたかたの日々』 

「現代人のための愛の一冊。

これを読まずして、現代の恋愛小説を語れようか」

 

上田秋成   『上田秋成全集』  

有名な<雨月物語>がある。いつか必ず書きたい。

まだ書けないのは、涙が止まらなくなるからだ。

おんなの愛の深さというものを知った作品。魂を揺さぶられた。

 

ベルトゥロ   『錬金術の起源』  錬金術は前科学だった。

世界史を学ぶうえで絶対に把握してほしい。

 

■10-読書そのものを読書する

 

ゲーテ+エッカーマン 

『ゲーテとの対話』 

「僕は3.4年の間この3冊を枕頭においていた」

もっと自然学を!。

 

澁澤龍彦  『澁澤龍彦集成・IV』 

澁澤さんを超えられひとはいない。澁澤さんだけだろう。

わたしは今でも生きていると思っている。 

  

吉本隆明  『書物の解体学』 

 わたしの吉本さんの墓の前での出来事を参照されたい。

 

白川静  『孔子伝』 

「孔子ほど聖人扱いされている人物はなく、

論語ほど悪用されている書物はない。」

わたしは孔子をまったく理解していなかったことに愕然とした大傑作。

これが学者というものだ。  

 

■11-読書が歴史の矛盾を告示する

 

白川静 

『中国古代の文化 中国古代の民族』 中国を知るなら必読の書。

ここから日本人の学者の真髄を見た。

 

■12-読書で一番遠いところへ行く

 

ジュール・ラフォルグ  

『地球のすすり泣き』

「月とピエロに憑かれた僕の最も好きな詩人の代表作である。」

 

ノヴァーリス    

『ノヴァーリス全集』 

「青い花 この本を読んでいないとしたら、ずいぶんの損をしていたことになります。世界で最も美しい魂の物語」

 

宮沢賢治  『宮沢賢治全集・10』

 「この巻にはジョバンニとカムパネルラと風の又三郎と北守将軍がいる。
彼を勧めることは、われわれの矜持である。」
賢治なくして日本人は見えない。

 

F・ニーチェ  

『ツァラトゥストラはかく語りき』  高校時代はニーチェばかり読んでいた。

 

津島秀彦+松岡正剛  

『二十一世紀精神』

 松岡さんの初期の対談。物凄い刺激を受けた。爆弾のように。

 

岩田慶治  『カミの人類学』 

ここから永遠の絶版本<生と死の境界線>へ行く。

岩田さんが死の直前に松岡さんを呼び、意識がなくなり死に至るまでのプロセスを口述録音させた前代未聞の本。わたしは最も大切にしている。

 

J・G・バラード  『結晶世界』  「史上最も近くて遠い美を描出しえた作品だ」

 

おおえまさのり訳編  『ミラレパ』 「マンディアルグがミラレパこそ青春の理想だと私に言った」
ここから<チベットの死者の書>へと行く。

人が死んでからの具体的な49日間のプロセスが書いてある。長く門外不出だった。

 

中村元編集  『原始仏典・大乗仏典』 

「法華経はスペース・オペラ、

華厳経は善財童子のロード・マップ。まずは法華経から。」

仏典を学ばずしてアジアも人間も見えてこない。悩んだら仏典へ。

口語体で読みやすいが、意味は別。修行と思って覚悟すべし。かかれ!。 

 

荘子 『荘子 内篇・外篇・雑篇』 

「荘子こそ大いにアナーキーな遊学の人だった。できれば明日にでも手にとってみてほしい。眼が洗われる」

<胡蝶の夢>とは何か。いずれ書きます