こころを元気づけたいと思って、車を運転中はFMラジオを聞くようにしている。

感動する曲に巡り合いたいから。


しかしこころに響く曲に、なかなか出逢えない。

これはどうかなっと思う曲を耳にして、あらためて聞き直してみると、

ふうとため息がでてしまう。

難しいものだ。



探しているときには見つからない。

しかし、ぼんやりしているときに、メロディは向うから訪れるときがある。


ベッドで深い眠りについているときに、音の妖精が訪れてわたしの耳元でささやいた。

「あなたは知っているはずですよ。

あなたがフランスを好きになったのもこの作品。

そして、あなたが愛を知ったのも。」


夢だったのだろうか。

なぜか眼から涙が溢れていた。

あのメロディはなんだったのか。

思い出した。



それがこの作品。

ふたりが待合室からホームへ出た瞬間のメロディのタイミングで

胸が詰まってしまう。

何度見ても感極まる。


フランスは、これだけの映画の傑作を作ることができた。

フランス語のなんという言葉の響きの美しさ。

雨傘の色彩感覚の素晴らしさ。

カトリーヌ・ドヌーブの清楚で一途な女性の魅力。

彼を見つめているときの彼女の瞳。

ブロンドの髪の美しさ。


監督・脚本のジャック・ドゥミのこのシーンへのこだわりが素晴らしい。

ふたりがホームへいくまでの間に、

見ているひとたちはすでに、切なさで胸が張り裂けそうになっているだろう。


そこに音楽のミシェル・ルグランが彼の最高傑作とも言えるドラマティックなメロディで

盛り上げる。

ここで感動しないひとはいないだろう。





別れということだけではなくて、<ひとの純粋なこころ>を真剣に見つめた作品なのだ。

これを不朽の名作というのだろう。

古びることも滅びることもないだろう。

わたしたちの最も深いところにある、大切な気持ちを見事に表現してくれている。


物語全体をどう見るか。

それはあなたに任せよう。


ドヌーブが今でも美しく輝いていることも素晴らしい。

この作品が再評価されていることもうれしい。



わたしはあらためて思った。

この映画を見て、再び感動したわたしのこころはまだ生きていることを。


からだはどれほど弱っても、あとどれくらい生きられるかわからなくても、

この愛の作品に巡り合ったことに感謝しよう。



最近、新しいプロジェクトが始まって出張が増えている。

血圧が高い状態が続いているけれど、長距離運転もしなければならない。

未知なことばかりでこころとからだが消耗していた。


ホテルでひとり発熱してうなっていたこともあった。

久しぶりに孤独を感じていたせいもあるのか。

こころが乾かないようにしなければならない。


いずれにしても魂を揺さぶる偉大な愛の作品。


ひとは好きなものがある限り、生き続けようという意志が働くのだと思う。

愛ゆえに。