$絶対への接吻あるいは妖精の距離

これはドイツ風のレストラン。

壁に張り付いた葉の赤が美しい。


足元を見ると、枯れ葉が増えてきていることがわかる。

朝の気温がマイナス1度。

急に冷え込んできた。

歩いていても、手が冷たくなっている。

手袋が必要だ。

あと、一週間もすると初雪になるかもしれない。

冬支度で、忙しい時期が始まっている。


歩道の枯れ葉を眺めていた。

イブ・モンタンの「枯れ葉」を知っているだろうか。

知らないひとも増えていると思う。

このシャンソンの名曲の詩を書いたのがジャック・プレヴェールというフランスの詩人だ。


$絶対への接吻あるいは妖精の距離


プレヴェール。懐かしい響き。

1900年 生まれ~1977年 没。

映画「天井桟敷の人々」の脚本も書いている。

傑作だ。

アンドレ・ブルトン(わたしのプロフの写真のひと)が

1924年にシュルレアリスム宣言(超現実主義宣言)を出版し、グループは結成された。


プレヴェールは1925年にグループに加入するが、

1928年に離脱をして、シュルレアリスムと論争を続けた。

わたしもそれからの彼のことは詳しく知らない。

だが一時期シュルレアリストであったことだけで、特別な存在になっている。


フランスでは彼のことはまだ知られているのではないか。

彼はパリの詩人と言われた。

愛の詩人と言われた。

反権力・民衆の詩人と言われた。

それだけ愛された詩人だったと思う。


詩集はフランスでは沢山出版されている。

調べてみたが、日本ではほとんどないようだ。

古書店であるかもしれない。


なぜなのか。

これほどわかりやすい詩が知られていないのか。

愛されていないのか。

例えば日本でフランス人の詩集が出版されていないものが山ほどある。

わたしが今でも待っている詩集もある。


プレヴェールの詩がなぜ好きかって?。

この詩を読んでほしい。


「夜のパリ」

闇の中でひとつずつ擦る三本のマッチ

はじめのはあなたの顔をいちどに見るため

次のはあなたの眼を見るため

最後のはあなたの唇を見るため

そしてあとの暗闇はそれらすべてを想い出すため

きみを抱きしめながら


          ジャック・プレヴェール


これは詩人でなければ書けない。

こんなロマンティックなことを誰が想像できる?。

それは詩人だ。

あなたの顔。 あなたの瞳。 あなたの唇。 

3本のマッチで見つめる。

あなたを。

素敵だ。 ため息がでてしまう。

終わりの言葉は、なにも言う事がない。

これ以上の愛の詩があるだろうか。



もうひとつだけ紹介したい。


「庭」

限りなく年を重ねても

言いつくせないだろう

あの永遠のわずかな一瞬

きみが私に口づけをした時のことを

冬の光をあびた朝

パリのモンスリ公園で

パリで

地球の上

星の地球の上で



プレヴェール。

愛のひと。パリで、星の地球の上で。

あの永遠のわずかな一瞬。


こころが震えるような、痺れるような言葉が感動を与えてくれる。

言葉にこれほど酔えるものか。


愛を歌うことは簡単ではない。

少なくとも、生の中で、愛の占める比重がどれほど大きいものか。

ひとは、愛をどれほど求めているのか。

愛のない人生がどのようなものなのか。

愛が人生をどれほど豊かにしてくれるのか。

苦悩のなかにあっても、これほど大きな価値を持つものはない。

愛と生は切り離せない。

愛がなければ、生きている意味もなくなるかもしれないのだから。

愛があれば耐えられるものも多いはずだ。

愛は生きる希望そのもの。


詩は、そんなことを教えてくれる。

だから詩を愛する。

詩人の魂を愛する。

彼らの人生に関心を持ち続ける。


わたしは詩人ではないけれど、詩を愛するこころは持ち続けたいから。