
前回の記事から随分と時間がたっている気がする。
退院したのが9月3日、会社へ出社を始めたのが、9月17日。
仕事は、はじめの数日は、午前中だけ出社をして、次に通常勤務をしていた。
傷の痛みは前半辛かったけれど、座っても痛みの感覚が薄くなってきた。
ただどうにも力が入らない。声にも力が入らない。
考えて見るとお腹を30cmも切っているということは、腹筋も切っている。
これでは力が出るはずもないということに気がついたのは数日前だ。
これが未知の体験というものだと思う。今までじぶんのこころと体は一緒だと思っていた。
そうではなく、別のものだった。そして体は寡黙だ。
力が入らないということが、気力の回復にも大きな関係があるということも初めて知った。
毎日、少しずつ回復しているんだと言い聞かせていた。
上司や同僚のわたしへの気遣いも痛いほど身にしみていた。
仕事のピッチも上げなければならないのに、
体が言う事をきいてくれない歯がゆさが、こころにのしかかるようになっていた。
みなさんから温かいはげましの言葉をいただいているのに、
じぶんの体はこれでいいのかという気持ちが消えなかった。
10月○日 病院へ1か月ぶりの診察。
先生から、「あまり経過がいいとは言えないですね。体質のせいでしょう。
薬を使ってみてください」と言われる。
体質?初めて聞いた。傷口の赤い部分が消えにくいようだ。
いつも体が熱い。まだ熱を持っていて懸命に修復作業をしているのが痛いほどわかる。
治癒まで時間がかかるんだろう。 半年はかかるというひともいる。
そして、先生は「手術で胆嚢を摘出して、回復に向かっていますね。
ただ、別の検査が必要です。CTのこの画像を見てください。」
ある内臓が黒く見える。そこに、はっきりと白いものが見えている。
「あなたが激痛で入院されたとき、緊急検査をしました。
そのときは、この病変にわたしたちは疑いを持っていたのです。
ただし、開腹手術をしてみないと分からない。
開けたところ胆嚢が破れて、腹膜炎を起こしていたのがわかったのです。
腹膜炎は命にかかわるものなので、時間との闘いでした。
腹膜炎の処置をして、この部位は手をつけなかったのです。」
その白く見えるものは幾つかあるようだ。わたしは絶句していた。
緊急手術の意味を考えていた。病院の判断は適切だったと思っている。
「急性胆嚢炎穿孔」とは、胆嚢に穴が開き破れてしまい、胆嚢は壊死している。
この段階で処置を誤ると、死亡する危険性もあるようだ。
問題は、破れた胆嚢から胆汁が染み出し腹膜炎を起こしたこと。
これでもっと死亡率が高くなっていたようだ。
わたしがいつ命を落としても不思議ではなかったことが次第にわかってきた。
確かにそうかもしれない。いまわたしがここにいる。
いや、いなくなっていたのかもしれなかったんだと思うことが増えている。
これから検査、そして再入院の可能性が高い。
また病名は別のものなので手術になるだろう。そのあとは想像がつかない。

診察が終って、書斎に戻ると、 ふうっとため息がこぼれた。
PCを見ながら久しぶりに「ニューシネマパラダイス」のサントラを聞いていた。
6曲目「cinema in feamme」が流れた瞬間、
突然、涙が止まらなくなって、声を張り上げて泣いていた。
魂を揺さぶる深い感動。トト、アルフレード、彼を愛するひとたち、
愛する永遠のエレナ。みんなの優しい顔が浮かんでいた。
生きているものへのいとおしさのようなものを感じていたのか。
11月19日はスガシカオのコンサートだ。
6年ぶりの山下達郎のライブも来年4月の札幌でのラストコンサート
のチケットをプレリザーブで申し込んだら、抽選で当った。
特急で片路3時間半かけて、ホテルに一泊しなければならないので
今まで諦めていたけれど、達郎のコンサートへ行く事に決めた。
ようやく達郎に会える。なかなかチャンスはないだろうから。
倉本聡さんのドラマ「風のガーデン」を見た。
倉本さんが、遺作だと話していた作品だ。 そして緒形拳さんの遺作にもなってしまった。
ドラマは、わたしの最近の入院体験と重ねあうところが多かった。
深い世界に入っていくんだなと思った。
これが倉本さんと緒形さんの遺作なんだねと、こころのなかで何度も頷いていた。
あの美しい花のガーデンは三途の川を表しているとのこと。驚いた。
「死を目前にしたとき、恐れと生きたいという気持ちとが自分の中で
どういう状態になるのだろうか」ということがテーマになっている。
素晴らしい作品になると思うので、是非観て欲しい。
わたしも覚悟して見るつもりだ。ただの作品ではないのだから。
平原綾香の主題歌「ノクターン」を聴いて、お月さまを見ながら、人生を想うのもいいだろう。
平原綾香 - ノクターン
そして、わたしは、いつまでもトトでいたい。
愛するひとたちとともに。
あきらめるわけには、いかないのだから。