いつまでも気になっている魔法のような絵画とは?と聞かれたら、
わたしは、この作品を選ぶだろう。

その出逢いは、初めてパリのルーブル美術館に行ったときのことだ。
今まで観たかった作品を、驚嘆しながら眺めていた。
さほど大きくもないこの絵を観た瞬間、吸い込まれていく感覚を覚えた。
今まで経験したことがない感覚が絵の中から湧き上がっているようで、
しばらく金縛りのように魅入っていた記憶がある。
この絵からは、甘美で危い香りが漂ってくる。
それ以来、この作品はわたしの宝物だ。

いったい、この絵はなんだろう?。
不可思議な雰囲気としか言いようがない。
この絵を拡大して、よく見て欲しい。

2人の美しい女性が、浴槽から画面のこちら側に視線を送りながら、
ひとりの女性が、もうひとりの女性の乳首をつまんでいる。
その乳首をつまむ手の形も優雅で、不思議な感覚に襲われる。
2人の女性が、こちら側に視線を送っているとしか思えない。
その魅惑的な視線に、まるで誘われているようだ。

もちろん色白の柔らかい上半身の肉体が美しい。透明で官能的な美。
そのひとは、指輪を左手でつまんでいる。
赤のカーテンが、見事に女性たちの肌の白さを際立たせてくれる。
左側の女性は、微笑んでいるようにさえ見える。
これらの仕草には、様々な寓意が込められているらしい。

そして2人の後景に、赤ちゃんのおむつを縫っているような女性や暖炉、
飾られた絵画などが垣間見える。

これらは、どういう意図で描かれたのだろう?。
飾られた絵画にヒントがあるとも言われている。
絵画の中の絵画・だまし絵(トロンプ・ルイユ)なのか。
謎の奥に、もうひとつの謎がある!。

ガブリエル・デストレはブルボン王朝のアンリ4世の愛妾であり、
このときは、妊娠していたらしい。毒殺説もある。20代で亡くなっている。
この絵の内容には諸説があり、多くの謎は今でも解明されていない。
フォンテーヌブロー派と呼ばれているが、画家の名前すらわからない。

ルーブルの宝でもある。官能的であり、神秘的で幻惑される作品だ。
想像力を掻き立ててくれる作品とは、この絵のことを言うのだろう。
謎がどうあれ、わたしが愛する作品であることに変わりはない。

この謎が解けるかな?。この作品をどう感じるかな?。

想像力こそ、わたしたちに残された大切な財産だろう。