
わたしは、アンドレ・ブルトンやシュルレアリスムについて、少し書いてきたが、
シュルレアリスムの絵画については、書いていなかった。
愛している絵が多すぎることもあるけど、ポール・デルヴォーを選んだ。 (絵を拡大してみて欲しい)
わたしにとって、彼の絵でこれが一番というものはない。
選ぶことが出来ないほど、愛しているのだろう。
彼の絵は、シュルレアリスム関係の本では、良く見ていた。
なぜか、魅かれるものを感じていた。
シュルレアリストとしての活動は、活発ではなかった。
遅れてやってきたシュルレアリストでもあった。
わたしにとって決定的だったのは、彼の展覧会に行った事だった。
そこには、キリコの影響を受けた<空間の静寂>が漂っていた。
多くは夜だ。この空間に出てくるのは、いつも美しい裸体の女性達だ。
彼女たちの同じような表情だ。
生きているのだろうか、それとも人形なのだろうか。
そして、その瞳は常に大きく輝き、俯いているようだ。
夜の空間に数人の裸体の女性たち、これこそが、シュルレアリスムの美だと思う。
わたしは、彼女たちの美しさに魅了されたと言ってもいい。
あの不可思議な空間に、エロティシズムが溢れ出ているんだ。
この空間では、時間が停止している。
わたしは、彼の<青>の使い方にも魅了された。
<青>をこれほど、夢の中へ世界に導くように使えた画家を知らない。
美術館で、彼の1mもあるポスターを買って、長い間、部屋に飾っていた。
不思議な目で見る人もいたが、以前、絵を描いていた私にとっては、関係のないことだった。
彼がこのような絵を書いた背景には、強い母との関係があるとも言われている。
愛している人を引き裂かれたこころが、このような女性たちになったのかもしれない。
澁澤龍彦の、デルヴォーへのオマージュが素晴らしい。
「生涯にただひとり、同じ顔をした理想の女を追求するひとのように、
この画家は、彼しか出会うことのない永遠の女の原型を描きつづけたのであろうか」
そして、デルヴォー本人の言葉を紹介したい。
「わたしの絵のほとんどの中で描かれる女たちは、同時に女神であり、ミューズなのです。
そして、わたしの描き出そうとしている女たちは、あらゆる人々を魅了する、光です。」
デルヴォーは、わたしのこころの中に住み続けている、愛すべき人だ。
「デルヴォーは世界そのものを、こころの広大な郊外地域を支配する
つねにおなじひとりの女の帝国としており、
そこではフランドルの古い風車たちが、
鉱石の光沢のなかで真珠の首飾りを回転させている」 アンドレ・ブルトン
さあ、あなたも、デルヴォーの世界へ入ってみませんか?。