これほど愛している作品はない。これほど涙を流した作品もない。

この作品は、<劇場版124分>と<完全版170分>の2種類がある。
当初はイタリアで完全版に近い形で上映したが、成績が振るわなかったので、
46分をカットした。そして、劇場版は世界中で大ヒットした。
日本でも、未だに破られない上映記録を作った。映画祭でも大きな賞を山ほど貰った。

映画の後半は、トト(青年になるとサルヴァトーレ)はエレナとの物語がテーマとなっていく。
しかし、エレナの親に反対され、2人は引き裂かれていく。

わたしも好きになった女性の家の前で、ずっと立ちつくしていたことがある。
会えないのは分かっているけど、ひと目でもいいから、彼女の姿が見たい。
少しでも彼女の近くにいたい。その思いだけだった。それが普通の気持ちだと思う。

しかし彼女は親に反対されても、彼に会いに行く。
これほど熱く、純粋で美しいキスシーンはない!。
Kiss scene from Cinema Paradiso

劇場版では、突然エレナが行方不明になり、2人の熱い恋は終わったように見えた。
それも、ひとつの物語だと思う。ただわたしのなかでは、何かが引っかかっていた。

数年前、完全版を見た。こころの中で、引っかかっていたものが、全て明らかになっていた。
彼はアルフレードの葬式に参列するために、故郷に30年ぶりに帰る。
そして、彼女が故郷にいることを知る。このシーンがショックだ。
気がついたら、彼女に会いたいと電話をする。

彼女は結婚していた。彼は、彼女をこころの中から恐らく消そうとし続けたと思う。
その間、色々な女性と付き合った。でも、彼女への愛の深さと比べることはできなかったのだろう。
彼のこころには、エレナが住んでいた。彼女への愛は変わっていなかった。
彼は独身のままだった。
彼女は電話で、会わないと言った。しかし、彼女は彼を探し回って、2人は再会する。
彼女は今、会わなければ一生後悔すると思ったんだろう。もう後悔はしたくないと・・。

驚くべき事実がそこでわかる。エレナは、行方不明になったのではないこと。
彼女はあの時、引越し先を伝えていたのだ。
しかし、そのメモが・・。メモの言葉。そして、お互いに探し続けていたこと。
どうして互いの場所が分からなかったのかも謎が解ける。

このPVはイタリア語。DVDの字幕の言葉の数々は、
2人が長い間、互いのことをどう思っていたかが告白されるので、
どうかDVDで2人の言葉をかみ締めて観て欲しい。
Nuovo Cinema Paradiso (parte 6 (2))

このシーンが劇場版ではカットされていた。わたしには、信じられない。
これほど大切なシーンはないのに。監督の想いは、時間が経ってようやく完全版として復活した。
サルヴァトーレとエレナの物語の深さが、劇場版と完全版の違いなんだ。
カットされた46分の中に、監督が伝えたかった愛があった。

こころのなかに、想いが深く生きていれば。時間も空間も関係ない。
こころには、変わらないものもあるんだ。
そんなことはない。あれは映画の世界さ。ひとのこころは変わるものだ。
この時代にそんなひとは、もういないと思うひとは、こころの寂しいひとだと思う。
ほんとうに、ひとのことを思ったことがあるひとにはわかるはずだ。
こころから会いたいと思えば、願いは必ず叶う。想いは必ず伝わる。

是非、完全版を見てほしい。一般的には、劇場版のほうが評価が高いようだ。
でもわたしは、完全版を選ぶ。2人の言葉は、わたしを納得させてくれた。
わたしは救われたような気がしていた。
そうか、そういうことだったんだ。そうだよなあ。わかるよ。
ほんとうによかったねと思いながら、思わず涙が流れ落ちていく。
彼女の涙の意味もわかるから。彼女もずっと会いたいと想っていたから。
あらためて観たけど、やっぱり涙でテレビの画面が見えなくなっていた。
とうとう2人のこころは、ひとつになったのだから。想いは、ほんとうに繋がったから。

こんなに、ひとのこころが大切だと思わせてくれる映画はない。

アルフレードが、故郷を離れるサルヴァトーレに言った言葉だ。
「自分のすることを愛せ。子供の時、映写室を愛したように」
わたしも、子供の時から愛したものを、愛し続けている。これからもずっと。いつまでも。

そして、サルヴァトーレがエレナに、ローマへ戻る直前に電話で話した彼の言葉。
「決して・・。」
わたしも同じだ。そう、わたしのこころは変わらない。「決して・・。」