なんとか自分を取り戻すのに、随分時間がかかった。

医者にかかるか、どうするかを悩んだけれど

騙し騙し、自分でなんとか持ちこたえた。友達とαに支えられ。


まずは私がしっかりと、これからどうしていくつもりなのかを考える。

今までの人生、自分に自信をもって生きてきた。

そして、ここで一度失った自信をどう取り戻すか

一度失った自信を再度取り戻せば

これから私と娘の生活の基盤を支える糧になってくれるはず。


そして、資格取得のために学校へ通い始めた。

思い出した。私は常に目標を据えて頑張ってきた人だ。

学生時代には、勉強なんて頑張ったこともなく常に、中の中くらいを過ごし、終えた。

その頃の目標は、大学や資格などではなく、今の旦那だったから。


でも今は違う。

鼻先に人参をぶら下げられた馬のように、

資格イコール=給料アップの現実に、今までに無い集中力で

授業をこなしていく。生活がかかるとこうも違うかと自分でも笑える。


αに学校に通い始めた話をすると少しさみしそうな表情で言った。

「そうやって女の子たちは目標を見つけて僕から離れていった。

いつも僕は立ち止ってそばにいたのに・・・」


きっと、私もそうなるだろうと言いたいのかもしれない。でもそんなことは私にはわからない。

一緒にいる時間が増えれば増えるほどお互いの見えなかった事が見えてくる。


些細なことで、へそを曲げる人だということも。

気分を害した事を口にせず隠し、距離を置きたがる人だということも。

案外、お金の使い方にうるさい人だということもわかった。でもケチではない。


私は、やはり来月から家を出ることにした。

旦那は相変わらず、いやみを言ったり、なんだかんだ

あの手この手で引き留めようと躍起だ。

挙句は、私の身勝手で家を出て行くんだからと私を悪者に。

きっと、私の家族も私さえ我慢しとけばいいんだと

また、前回と同じ様に言ってくるだろう。


でも、今回ばかりはもう周りの意見にはまどわされず

自分の稼ぎだけでやっていける環境を見つけ

そして、目標と仕事と子育てだけの時間をしばらく過ごす。

もう、みんなほっといてほしい。勘当で、家族も失うか?


でも、はっきりしたのは、αがいなくても

ひとりでやっていけるだけの目標を持てた事で

がんばろうと、改めて心構えもできた。

その傍らにαがいてくれればいいのだ。


私が不安定だった理由は、結局αが目標だったのが原因。

それが、自力で発見できただけでも不安定になってしまった価値があるというものだ。


ある酷く冷え込んだ夜

αと一緒にいられる時間ができた。

友人の家に泊まるという口実を作った。

朝にはお互い仕事に行かなければならない。

そう時間もない。

だから、寝る間もない。


ほどほどに飲んで、お別れをした。

αはこのまま出張。

白み始めた空から隠れるように帰路に就く。

部屋にはもう旦那が帰っている。

朝、車を取りに来てそのまま仕事に行ったと言うことにするつもり。


あと2時間位は寝られる。


寝れない・・・・。

私はふと、自分のやっていることを思い返しはじめた。


旦那は、何度話しをても私とは離れたくないと言う。

言うばかりではなく、日常生活も少しづつまともな方向へ軌道修正している。

無駄なお金遣いもやめたみたいだ。

仕事が終わって帰ると、夕ごはんを作ってくれていたりもする。

私への気遣いが、痛いほど伝わってくるのが辛い。

だってそんなにしてもらうほど私は必要とされる資格は無い。


そして、私の気持ちが何ら変わらないことに気がつくと

私たちがいなくなれば、きっと自分はダメになるだろうと

脅しに入ってきた。どこまで残念な人なのだろう。

正直、別れた後彼がちゃんとやっていけるのかどうかが心配な気持ちがかなりある。

そこに付け込んできたのだ。でもこれは、恋愛感情などではなく、ただの情と責任感。


一度生涯を共にすると、大勢の愛する人たちの前で誓ったはずなのに

今では、車で2時間を過ごした方がましなほどに

一緒にいたくない相手に成り下がってしまった。


αは、本当に私を心から愛してくれている。

私も本当に彼が必要だ。

けれど、こうやって私が旦那と別れられない以上

いつもαは一人で。


私がαにちょっかいなんてださなければ

彼をこんなに苦しめることにはならなかったと

また後悔。いい加減、この一週間一生分の後悔をした気がする。


最初の頃はαによく言われた。

「君にとって絶対に良くない。いろんな意味で後悔することになると思うよ。」

そんな言葉なんて、気にも留めずに彼の心を惹きつけるのに必死だった。

結果αの言う通り後悔するはめになった。


結局、すべて忘れて戻ってきてくれと懇願する旦那にも戻りきれず

αの元へも駆け出せず、いったい私はどうしたいのだろう。

すべては私の責任。すべて私が悪の根源だと思い始めたら

生まれて初めて「死んでしまいたい」と思った。

自分のやっていることが、収集がつかなくなってしまって

結果、誰も幸せに何かなれないのは、全部私のせいだと思い始めた。

随分ご都合主義の「死んでしまいたい」で笑っちゃう話だけど

正直、その時は本当に怖かった。


抜けかけのアルコールと睡眠不足。

自分の主張ばかりを押し付ける旦那への嫌悪感。

やりたいほうだいの自分への罪悪感。


私一人が辛抱すれば、全てがうまくいくの?

そうなったとき結局、傷つくのはαだけ。


「あまり僕を惑わさないでほしい。もう傷つきたくないから。」

いつも振られるのは僕の方。好きな人なんて作りたくなかった。

そういってたαの顔を思い出す。


死にたい気持ち。本当に怖かった。自業自得でも、怖かった。

自分はとてもポジティブでご都合主義の人間なのがよく分かっているからこそ

あの気持ちが自分が招いた結果だということに、恐怖を感じた。


自力で立ち直れるか私。

それとも心療内科で安定剤貰うか?


別居を決意し、家族に心の準備をさせるため

一旦はやり直すと、嘘をついてから

まるで何もなかったかのように、私の周りは順調に流れ始めた。


でも私の心は何ら変化はなく、相変わらず、どこの地域に住むのが理想か

物件を日々探し続けている毎日。


αの実家にも数度お邪魔し、母親と顔を合わせた。

まさか、私が既婚者だとは夢にも思っていないだろう。


私とαの会う頻度は、どんどん増えて行き

今では三日会わなければずいぶんと会っていなかったかの様に

感じてしまうほど。


出張の多いαは、週の真ん中あたりはほどんどいない。

でも、それ以外の日は、時間の許す限り会いに来てくれる。

彼といると、とても落ち着く。

逃げているのではなくて、無理せず付き合っていけれる相手とは

こういう事を言うのかもしれない。


「僕だって毎日いろいろ考えて生きてる。いつまでも君を待てるとは限らないよ。」

そう、言われてしまうと正直気持は焦るけれどでも、だからといって子供を連れて

家を飛び出しαの元へなんてことは、あたしにはできない。


筋道通して、すべてにケリをつけた時

その時まだ、αが傍にいてくれれば、本当に幸せなんだろうなと

思うことしかできない。それは、もちろん自分の為でもあり、αの為でもある。


「君は僕がお金を持っていなかったら、どうしただろう好きになったかな。

君の生活はとても派手に見える。僕はとてもつまらない男だよ」

そういって、私の顔を覗き込む。

どうしただろう・・・。正直好きになってしまった以上今になってはわからないけれど

興味を持つきっかけではあったかもしれない。


αは私の子供の事をいつも気にかけている。大勢で出かける時もいつも。

だから子供も彼になつく。もともと、私とこうなるまえからそういう人だった。

彼が離婚でもめていた時も、子供がいれば僕は離婚しなかっただろうと話していた。


「たとえ、僕の血を引いていないとしても、君と僕が一緒になれば、僕の子供と同じ事だよ。」


この言葉がはたして現実になる日が来るのだろうか。

そして、この言葉を本当に信じていいのだろうか。


今すぐにでも家を出たいなら力になるよと言ってくれるけれど

本当は、すぐにでも出ていきたい。

でも、自分の力で全ての事を成し遂げなければ

あとから、後悔しそうな気がして。


いつもありがとう、気にかけてくれて。

本当にうれしいよ。ありがとう。