映画「ストックホルムでワルツを」エッダ・マグナソン | TO NI LAND 

 

 

映画「ストックホルムでワルツを」

を観た。

 

 

 

 

 

 

 

 

チェット・ベイカーが

思い出される、

 

『It Could Happen To You』

のイントロが小気味よく流れ、

 

 

観客たちが頭をスイングさせて

リズムを刻んでいるなか、

 

 

自身もミュージシャンである

エッダ・マグナソンが演じる、

 

モニカ・ゼタールンドが

悠然と歌い始めるが、

 

 

歌声といい容姿といい、

 

その出来映えの良さに

驚かされ、

 

 

エイドリアン・ブロディに

似ていたため、

 

ピアニストかと思った

アメリカ人の男が、

 

 

実はスカウトマンで、

 

 

“ニューヨークで

歌わないか?”と、

 

さっそくモニカを誘うあたり

までのリズミカルな展開が

 

セッションを思わせ、

 

 

のっけから臨場感たっぷりで、

 

劇場で観賞していれば

と後悔し、

 

 

そういえば、

 

私がジャズを

嗜むようになったのは、

 

 

当時、

 

映画「ラウンド・ミッドナイト」を、

 

劇場で一緒に観賞した

友人から、

 

 

“ジャズを聴く男は

モテるらしい”

 

と言われたのを

すんなり受け入れ、

 

 

サックスの嘆きを聴いて

ジャズを語れるような、

 

大人の男を夢見たのが、

 

きっかけだったことを

思い出した。

 

 

 

 

 

モニカ・ゼタールンドの

歌を聴いたのは、

 

 

ショパン生誕200周年の春、

 

ツィメルマンの

コンサート帰りに立ち寄った、

 

ジャズバーが最初で、

 

 

“エーケン、バッケン

エーム”

 

と真空管のアンプから

ドイツ語で流れてきた、

 

 

『ワルツ・フォー・デビイ』

に興味津々になり、

 

 

その歌がドイツ語ではなく

スウェーデン語で、

 

 

ビル・エヴァンスと共演した、

 

『モニカのワルツ』という曲だと

教えてもらい、

 

 

彼女は、

 

母国語でジャズを歌う

国民的歌手だということも知って、

 

 

なぜか東北訛りのようにも

聞こえたりする、

 

自然で素朴な歌声が

気に入ったのだが、

 

 

「ストックホルムでワルツを」で

モニカを演じた、

 

エッダ・マグナソンも、

 

 

負けず劣らずの

素晴らしい歌声で、

 

 

声量などはモニカを上回って

いるようにも思えて、

  

 

この曲を聴けば

マンハッタンが思い浮かび、

 

作品上ではモニカが、

 

ジャズをスウェーデン語で

歌うきっかけとなった、

 

『テイク・ファイヴ』は、

 

 

パワフルなうえに

滑舌の良さに感心し、

 

 

“すぐ外は夏の香りに

溢れているのに、

この部屋は凍てついている”

 

などと、モニカの心情を

歌にしたような、

 

『Trubbel』は、

 

 

演歌界の大御所が

切々と歌っているようで、

 

説得力があり、

 

 

モニカの代表曲でもある、

 

『歩いて帰ろう』は、

 

 

弾むようなリズムで

溌剌としたところが、

 

「となりのトトロ」の挿入歌

『さんぽ』を聴いているようで、

 

 

力強くて張りのある声が

印象的なシンガーだと思った。

 

 

 

 

 

 

モニカ・ゼタールンドが

スウェーデンの、

 

国民的歌手であるならば、

 

 

スウェーデンの

国民的英雄である、

 

ビヨン・ボルグを、

 

 

映画「ボルグ/マッケンロー 

氷の男と炎の男」で演じた、

 

スヴェリル・グドナソンが、

 

 

モニカに思いを寄せる、

 

ベーシスト役で

出演していた以外では、

 

 

 

その容姿が

映画「ミュンヘン」の、

 

カール(キアラン・ハインズ)

を彷彿させ、

 

 

もう少し、娘の気持ちに

寄り添えないものかと、

 

その度量の狭さに

呆れてしまった、

 

 

キェル・ベルキビスト演じる、

 

モニカの父親ベングドが

目について、

 

 

あれほど容赦なくモニカを

否定し続けていたのが、

 

 

なぜか、

 

ビル・エヴァンスとの共演が

実現した途端に、

 

 

電話で娘を褒めちぎり、

 

手のひら返しなのが

不思議で、

 

 

元ミュージシャンで、

 

 

ビル・エヴァンス風の眼鏡を

かけていて、

 

 

ビルとの共演を

モニカから知らされた時の、

 

ただならぬ面持ちからして、

 

 

父親ベングドは

ビル・エヴァンスの、

 

熱狂的なファンだったのでは

ないかと思われ、

 

 

手のひら返しは,

 

娘の成功よりも

娘を介してビルと近付けた、

 

 

自身の喜びの

表れのようでもあり、

 

 

それはまるで、

 

ハニートラップにはまった

カールを見ているようで、

 

 

 

もし、ベングドがモニカとの

電話を続けていたら、

 

 

 

 

“彼のサインを

貰ってくれないか?”

 

と切り出したに違いない。