これは永井豪の「マジンガーZ」をベースにしながら大胆なアプローチでリメイクし、新しいマンガにした「マジンガーZERO」全9巻の続編で全8巻完結。
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このマンガは前作を知らないと理解しにくいので軽くあらすじを。

マジンガーZが魔神化する事で繰り返される地球滅亡の歴史を変えようと何度も世界をやり直すミネルバX。
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その繰り返しに疲れた彼女がようやく行き着いたマジンガーZが魔神化せず、兜甲児と共に戦う世界。
しかしそこはDr,ヘルが機械獣によって人類の大半を滅ぼし、猛威を振るう世界だった。

兜甲児もこれまでの戦いにより生身の身体を失い、サイボーグとなってマジンガーに乗っていた。
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この世界の奇跡は兜甲児がこれまで失われ続けてきた世界の兜甲児の記憶をもっていた事で、それにより最強の敵・機械獣ゴードンヘルとの決戦で兜甲児の身体にあるマジンガーを魔神化させるチャクラを開きながら、マジンガーZが初めて自我をもった事で魔神化せずにゴードンヘルを倒し、世界を平和に導いた。

ここからが今回のストーリー。
壮絶な戦いから一年。
一時は地層や岩盤が根こそぎ破壊された富士周辺だったが多次元との融合により復活した。
これと同じ現象が東京をはじめとする世界数十箇所で起こり、再興を早めた。

兜甲児は遺伝子工学の進歩によって生身に近い身体に戻り、弓さやかと平和な日々を過ごしていた。
それは今まで叶わなかった願い。
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ミネルバもスーパーロボット博物館の館長として、勝利と平和のシンボルとして人々の信望を集めるZとともに毎日を送っていた。
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しかし多次元融合による奇跡がこの世界に無理を生じさせたのか世界各地でおかしな物が発見され、富士の裾野で倒されたあしゅら男爵の遺体がなぜかイタリアのコロッセオで発見される。
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それが合図のように新たな敵、暗黒大将軍
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が率いる七ツの軍団と戦闘獣を擁するミケーネ帝国が出現する。

戦闘獣との初戦はなんとか切り抜けた甲児とマジンガーだったが、生身に近い身体の甲児ではマジンガーを動かすには無理があり、深傷を負ってしまう。

ミケーネ帝国は多次元融合により生まれた、本来なら存在しなかった敵だが、多次元融合は敵だけでなく思わぬ味方も生んでいた。
光子力の実験中の事故で死んだはずの甲児の父親・兜剣造である。
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甲児と再会した剣造は甲児が戦わなくてすむようマジンガーZがを遥かに凌ぐ新しいロボットを開発し、操縦する戦闘のプロ・剣鉄也161006_154034.jpg
の訓練もまもなく終わろうとしている事を告げるが、兜親子が再会してる間に暗黒大将軍からマジンガーZを奪うよう命令されたゴーゴン大公
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による混成戦闘獣軍団が光子力研究所を急襲する
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新しいロボットの完成と剣鉄也の訓練が終わるのに必要な時間は48時間。
光子力研究所を甲児が戦えない状態でたくさんの戦闘獣達から守るには長すぎる時間だが、兜剣造の生存と新ロボットの話を聞いた弓博士と所員達、弓さやかとボス達は甲児とマジンガーを死守する為、研究所内での戦いを決意する。

意識をなくしていた甲児が目を覚ました時、12時間経っていたが戦闘獣の攻撃により研究所内は各階層の弓博士やすべての所員を犠牲にした防衛線は突破され、甲児のいる最下層部のすぐ上まで迫っていた。

最後の扉を護るのはさやかのダイアナンAとボスボロット。
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多くの仲間が死にゆく中、それでも甲児とマジンガーが生き残れば勝利なのだというミネルバに、甲児はみんながいなければ勝つ意味がないとマジンガーとともにさやか達を救出に向かう。

甲児とマジンガーがさやか達のところに着くとそこにはボロットの亡骸
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と戦闘不能になったダイアナンAの姿があった。
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怒りにまかせそこにいた戦闘獣を倒し、地上に出て戦闘獣軍団を迎え撃つマジンガーは魔神化するチャクラをすべて開いたが、圧倒的な戦力差によって無惨な姿にされてしまった。
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その様子を見ていた剣造は我慢しきれず完成間近の新ロボット・グレートマジンガーを向かわせる。
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甲児とマジンガーの前に現れたグレートマジンガーは強さは凄まじく、強力な武器とその性能を活かす剣鉄也の戦闘力でマジンガーをオモチャのように扱った戦闘獣軍団を簡単に蹴散らし、暗黒大将軍と一騎打ちに持ち込んだ。

グレートマジンガーの凄まじい強さを目にしたマジンガーに変化が起きる。
失った腕や故障箇所が再生し始めたのだ。
この様子を見つめていた兜剣造は自分の間違いに気づく。

剣鉄也とグレートマジンガーがミケーネ帝国と戦い、甲児とマジンガーZが戦いから退く事によってマジンガーの魔神化を防げると考えていたのだがそうではなかった。
戦闘獣にあれだけ痛めつけられても魔神化しなかったのは、ミケーネ帝国は取るに足らない相手でいつでも倒せる相手だったからであった。

しかし、グレートマジンガーの強さはマジンガーに刺激を与え、それが魔神化させたのであった。
マジンガーは、グレートマジンガーに戦いを挑む。
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その間にも魔神化は進み、マジンガーZの自我を消し去り、甲児の意識をも取り込もうとしていた。
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今にも消えそうな意識の中、甲児はミネルバとさやかが滅亡の歴史を変える鍵である事を鉄也に伝える。

魔神化したマジンガーを止める術はなく、この世界も終わろうとしている。
ミネルバもやり直す事を諦め、好きだったこの世界とともに消える決意をしていた。

だが甲児は魔神化による滅亡の歴史を止める事を諦めておらず、次の世界を始めるようミネルバに託す。
戦う事を諦めない甲児とミネルバはそれから何度かのやり直しを経て、ついに過去の世界で体験した魔神化する可能性をすべて事前に潰す事で魔神化させない事に成功する。

いや、成功したかに思えた…。
しかし、実はそうではなく、甲児の記憶してる多次元は消え失せたわけではなくマジンガーが魔神化した世界として平行して存在し続けていたのだ。
甲児がその事を知った後、マジンガーの使いとしてもうひとりの兜甲児が現れ未来が確定した事を告げる。161007_145614.jpg
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それでも甲児は抗い続け、また数億回に及ぶやり直しを行うが、やがてマジンガーに取り込まれ、剣鉄也の存在もマジンガーに消されてしまい、マジンガーZが絶対負けない、マジンガーZこそ最強の世界に飲み込まれそうになるが、マジンガーをボロボロにした暗黒大将軍を思い出し、マジンガーZが負ける事をイメージする。

するとグレートマジンガーが復活、それに同調するかのようにこれまでマジンガーZが最強であり続けるために想像されなかったロボット達が次々に生まれだす。

マジンガーの下で機能を停止し、抜け殻のように佇んでいたミネルバの眼前にマジンガーの内から飛び出してきたマジンガーZとグレートマジンガーの雄姿に、ミネルバも生気を取り戻した。

それに続き、今、生まれたばかりのロボット達が光となって飛び出して来る。
これはマジンガーにも想定外の事態で、すべてのロボットを消し去ろうと攻撃するが効きめがない。
マジンガーの想像を超えたものにはマジンガーの攻撃は意味を為さない。
この、人々の想像力こそ甲児がマジンガーを倒す為に生み出した光子力エンジンだった。

すべてのロボット達から放たれた攻撃は光の矢となってマジンガーを貫き、マジンガーは光に包まれながら消滅した。
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そして、新しい宇宙が始まった。

今回もまた長いあらすじを書いてしまった。

自分の悪いクセなのだが、ググれば簡単なあらすじはわかるが、その作品を読んでない人にも、少しでもその世界観を知ってもらおうとついね。

マジンガーZのオリジナルは、世界征服を狙うマッドサイエンティストの繰り出すロボットを、正義感の強い少年が操るスーパーロボットで倒していくというシンプルなマンガであった。
が、このマンガでは正義のロボットであるマジンガーZがはじめは人類の為に戦うが、最終的にその無敵の力を暴走させ、人類を滅ぼすという歴史を繰り返す悪の象徴として描かれている。

主人公の兜甲児もマジンガーのパイロットとしてだけでなく、最終的にはマジンガーと戦う重要な立場になっていき、最終的に兜甲児とマジンガーの精神世界の戦いに行き着く。
なんだかとても複雑な内容になっている。

このマンガがただのリメイクなら、どうしても古臭さを感じ、途中で読むのをやめていたかもしれないが、永井豪の「マジンサーガ」の世界を加えたり、マジンガーZの続編、「グレートマジンガー」がアニメ終了に合わせて完結した為、暗黒大将軍より強力な敵、闇の帝王の正体も謎のまま、グレートマジンガーと直接対決する事なく終わったが、この謎もZに倒されたDr・ヘルが幽体となってタイムスリップし古代に飛び、ミケーネ帝国を作り、闇の帝王となったという作者の描き方でDr・ヘルの宿敵ぶりに厚みをもたせていた。

ほかにも永井豪フアンが喜ぶような、ほかの永井作品のキャラを登場させたり、思わずニヤッとしてしまうようなリスペクト的な描写が随所にちりばめられていた。

ちなみに、あらすじに載せたマジンガーが戦闘獣達にズタボロにされたシーンは、永井豪の「デビルマン」のこのシーン
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をリスペクトしたものだろう(笑)
熱心な永井豪フアンなら、まだまだたくさんのオマージュしたシーンを見つけられるだろうから、そういう楽しみ方もできるのではなかろうか。

最後の方に出て来る光の形をしたロボット達、実はグレンダイザーや鋼鉄ジーグ、ライディーン、ガンダムまでいるのでロボットフアンもうれしいのでは?

マジンガーZの新しい捉え方をしていると思うし、使い古されたロボットものも描き方によっては新しいものに見れる事を感じられた。

自分がこの漫画家コンビを知ったのは、故・平井和正の小説、ウルフガイシリーズの一作目、「狼の紋章」をコミカライズした「ウルフガイ-狼の紋章」だったのだが、これが今回のマジンガーZよりおもしろく、続編を描いてほしいと思っている。

自分は、やっぱり正義のヒーローを素材にしたものよりダークヒーローを描いた、ちょっと暗さがあるものが好きなんだろうな(苦笑)