これは、同名小説をコミカライズしたもので、講談社版の小説の挿絵を描いてるマンガ屋さんが描いてるんだよね。
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これ、SFやファンタジー物を得意として、「銀河英雄伝説」や「アルスラーン戦記」、「創竜伝」などを代表作にもつ田中芳樹が、ここのところ、ライフワークとして書き続けている一冊一編の伝奇小説シリーズ。

この人の小説は、よく漫画化されてるみたいだけど、それだけ題材として、おもしろいのかな?

作画をしている垣之内成美は、もともと、アニメーター出身で、オレは、知らないけど、当時は、「マクロス7」とかいうアニメを手掛けていたらしい。

マンガ屋としては、アニメ化もされた「吸血姫」シリーズなどが代表作らしい。
実はオレ、これも知らなかったりしてガーン(笑)

この薬師寺涼子シリーズ、今は、小説を読んだ後にマンガを読むようにしてるんだけど、最初に知ったのは、マンガからなんだよね、オレあせる

このマンガを描いてる垣野内成美が、今は休刊になってしまった「月刊マガジンZ」
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という雑誌で、「LIN3」というマンガを描いてて、このマンガ屋の絵柄とかストーリーが好きで、結構、楽しく読んでたんだ。
それが終わって、次に描き始めたのが、この、薬師寺涼子シリーズだった。

で、LIN3の時は、単行本まで買う気にはならなかったけど、薬師寺涼子は、1巻が出た時、買ってみた。

2巻以降は、前後編構成になっているんだけど、1巻は、一冊完結だった。

この単行本がおもしろくてねー。

最近じゃ、あまり見かけなくなったパターンで、連載で読んでるのに、単行本でまとめて読むと、より、話がわかるんだよね。

このパターン、故・石ノ森章太郎がよく使ってたなあ。

雑誌連載時は、わかりづらかったものが、単行本化する時に加筆修正されて、それを読む事で話がひとつに繋がるんだよね。

話がとんだけど、とにかく、これが気に入って、原作小説を読んだら、文章も読みやすいし、おもしろいしで、月イチのマンガ連載より早いペースで小説のこのシリーズ、読破したよ。

で、ストーリーを知ったうえで、マンガ版を読むようになると、話がわかってるから、楽しめなくなるかも、と思ったけど、このシリーズは、おもしろかった。
マガジンZが休刊する迄は、別エピソードになっても通巻になってたんだけど、休刊後、連載雑誌が月刊アフタヌーンに移って、それからは、通巻じゃなくて、小説同様エピソードタイトルをメインにして、前後編形式にするようになった。
基本的には、小説を原作にしてるんだけど、それ以外に、脚本家が、この登場人物を軸に、小説には出て来ないオリジナルキャラを使って、コミカルに仕上げたマンガ版オリジナルのストーリーもスペシャル版として存在して、これも、いいんだよね。

ここからが本題。

主人公は、薬師寺涼子。(右)
警視庁刑事部参事管。階級は警視。 27歳。
東大法学部卒のキャリアで、傍若無人・傲岸不遜な性格を除けば、知力・体力・容姿・財力、どれをとっても完全無欠。
父親は、元警察幹部で、世界有数の警備保障会社、JACESを核とした企業グループのオーナー会長。
オカルトが大好きで、これまで数々の怪奇事件を、なかば強引に解決してきた。そんな彼女のあだ名は、「ドラよけお涼=ドラキュラも、よけて通る涼子」。
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泉田準一郎(左)
警視庁刑事部参事官付きの警部補。 33歳。
警察官としては、SP候補になるほど優秀だが、涼子のお守り役として、気の休まらない日々を送る。

室町由紀子
警視庁警備部参事官で、階級は警視。 27歳。
父親が元警視総監で、強い正義感と常識の持ち主。
涼子とは、東大法学部の同級生で、その頃から犬猿の仲。
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岸本明
由紀子の部下で、キャリアの警部補。 23歳。
オタクなお坊ちゃまで、現在、「レオタード戦士ルン」にハマッている。
その希少品を譲ってくれる涼子を、神のごとく崇めている。
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マリアンヌ&リュシエンヌ
フランス・パリにある薬師寺別邸のメイド2人。
料理からボディガードまでこなす上、マリアンヌは武器、リュシエンヌはITとそれぞれ、秀でた技術を持っている。
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このほかに、参事官室の涼子の部下、貝塚さとみと阿部真理夫がレギュラーメンバーとして登場する。
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今回のゲストキャラとしては、涼子のインターポール時代の同僚として、タマラが登場。
ロシア人で、ロシア警察の腐敗に見切りをつけ、地元で水ビジネスを営んでいる。
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敵キャラとして登場するのは、日下公仁。
日本で、10人以上を惨殺し、国外逃亡。国際手配された富豪。共犯の3人とシベリアの秘密都市に潜伏中。
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登場人物については、単行本のキャラクター紹介に書かれてたものに、一部アレンジをしました。

今回の話は、日本で多数の人間を殺して国外に逃亡、国際指名手配されていた日下がシベリアに潜伏してるという情報により、犯人逮捕の為にシベリアへと海外出張を命じられた薬師寺涼子と部下3名。

涼子と泉田は、日下が潜伏してるとされる場所に向かう途中に、さとみ&阿部、タマラらと落ち合うために立ち寄った町で、絶滅動物のサーベルタイガーと遭遇。

涼子が持つ、JACES特製の強烈な光を放つ懐中電灯と特製スカーフで牙を一本切断した事によって退ける。

先行き不安な状況の中、リゾート開発の名目でシベリア視察にきた、参議院議員で原子力村のボス・島倉の随伴で一緒にきた、涼子のライバル、室町と岸本まで登場。

混乱の中、タマラが手配した装甲車を借りて、日下の潜伏先に向かうが、現地で通訳として雇ったペトさん140128_141925.jpg
の裏切りに合い、背に銃を突き付けられながら日下のアジトへと連行される。

銃を持つ、ロシアンギャングに囲まれる中、そこで、またまた涼子と由起子が鉢合わせ。
日下は、シベリアを独立国として、島倉は、ここで核廃棄物処理をしようと考えていた。
日下は、日本人の絆の美しさを見たいと、キャリア(岸本)とノンキャリア(泉田)にコンビを組ませ、自分が飼育してるホワイトタイガー
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からどのように逃げまどうか楽しむつもりでいる。

放たれたサーベルタイガーから逃げる二人は、一旦、木の上に登るが、迫って来るサーベルタイガーの上に岸本が落ちてしまう。

岸本を背中に乗せたまま、敷地内を走り廻るサーベルタイガーに身の危険を感じた衛兵達は、泉田の制止も聞かず、銃を乱射する。

この混乱の隙に涼子は、衛兵の銃を奪い、サーベルタイガーの額を射抜いて仕留める。

岸本を救出し、敵兵から銃を奪った涼子達は敷地内にあるビルに隠れる。

業を煮やした日下は、敷地内に全てのサーベルタイガーを解き放ち、ビルに手榴弾を投げ込もうとするが、その時、上空から空爆する二機のハンググライダーが現れる。

涼子を救出にきたマリアンヌ&リュシエンヌである。
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さらにタマラも参戦。

涼子達による反撃が始まった…。

このシリーズを読んでいて楽しいのは、キャラクターがサザエさん状態で歳をとらない。(笑)

で、実は、泉田の事を涼子は好きなんだけど、その表現がふだんの彼女の態度に似合わない、テレ屋っぷりが可愛いらしい。

さらに、室町由起子も、なんとなく泉田が気にかかる様子。

けど、泉田本人は、まったく、それに気づかないニブさを発揮。

涼子と泉田の関係っていうのは、ふだんはワガママな涼子に泉田が併せてるんだけど、どこか信頼しあえてるのが読んでて伝わってくるんだよね。

この、ビミョーな距離感の取り方の伝え方がいいんだよね。

オレはね、こういう表現はの上手さってマンガ屋の上手さだったり、物書きの上手さだと思うんだけど、この作品については、マンガも小説も、どちらも上手いなあと思ってる。

それと、メイドでありながら、兵士としても一流のふたりについても、今迄は、活躍の場面しかなかったのに、この話では、ふたりの過去について、タマラが少しだけ語るんだけど、聞き手の泉田の対応がまたいい。

オレ的には、凄く納得しちゃった(笑)

リアルさを求める人はともかく、このテの伝奇物が好きな人は、マンガでも小説でも構わないから、一度、お試しあれ