小さな小さな雫がひとつ。
君の頬を落ちていく。
僕は何も出来なくてとても無力だった。
「ねえ、知ってる?」
「あそこのおじいさんとおしゃべりしたの。」
「お母様に怒られちゃった。」
「・・・・・・お腹すいたわ。」
「また、一緒に遊びましょう。」
無邪気な君が大好きで。
僕は君に恋をした。
だけど、叶わなかった。
君がもうすぐ死ぬなんて全然知らなかった。
『貴方が××君?いつも娘と遊んでくれてありがとう。
もうすぐ…居なくなってしまうからたくさん思い出をつくってあげてね。』
何を言われたか分からなくて。
目の前が真っ白になった。
『も、もしかして何も知らなかったかしら?
じゃあ、私とんでもないことを…』
___教えてください。○○ちゃんのこと。
『…いいの?
あの子は…命がそう長くはないの。小さい頃に病気にかかってねぇ。
あと、半年持てば良い方だって。』
意味を理解するのに半刻かかった。
『あの子は貴方に何も言わずに去ろうとしたのね。
これから病院に入院することも。何も言わず。
ねえ、お願い。あの子に楽しい思い出をつくってあげて。
病院に入院するまであと3日あるから。
どうかその間に……っ』
僕は走り出した。
君の居るところへ。
ただただ、ひたすらに。
「あら、どうしたの?××君?汗まみれで。」
____ねえ、今から一緒に海に行かないか!?
「海、ねえ。良いわよ。あ、でも準備が居るわね。
明日で良い?」
____だめだっ!今日が良い!
「? まあ、良いわ。荷物取りに行きましょう。」
君の家の前で君の用意が終わるのを待っている間僕は考えていた。
君が居なくなった未来。
でも、考えられなかった。
「………ん、……くん!!××くんっ!!用意が出来たわよ!さあ、何処の海!?」
君はいつもより少し高めなテンションで聞いてくる。
____そだね、じゃあ、△△海に行こうか。バスで。
「やったぁ!私一度行ってみたかったの。」
____お、それは良かった。じゃあ、行こう。
そうしてバスに乗って2時間。
僕らは海に着いた。
ちょっと日が沈んできたのが逆に綺麗で。泣きそうになってしまった。
「ねえ、砂遊びをしましょうよ!」
そう言って君は砂でお城やなんかを作り始めた。
でも僕は見てしまった。
君の頬に伝う涙を。
____○○ちゃ…
「…っく、ふ、ふえーん………し、死にたくなんかないよぉっ…
まだ、生きていたいよぉっ………ど、して私だけこんな目に遭わなきゃ行けないのよぉ…」
君が本当の君を見せた最初で最後の時だった。
君は僕の方で泣き疲れて寝てしまった。
僕はどうしたら君を助けれるのだろうか、ずっと考えた。
でも、何も出来なかった。
次の日、君と一緒に帰宅した。
迎えに来た君のお母さんは申し訳なさそうに目を伏せた。
今日は家で家族と過ごすそうだ。
そして入院日直前。
君は急な発作を起こし、病院に運ばれた。
でも、間に合わなかった。
20xx年9月5日。
君は死んでしまった。
僕は生きる価値を無くした。
だから今、僕は此処にいる。
さあ、飛ぼう。
足を踏み出した瞬間、君の声が聞こえた気がした。
「……馬鹿。」と。
