佳子がカウンターの向こうから、升に入ったグラスに酒をつぐ。升には細かく削った氷が敷き詰めてある。その中にガラス製のコップがはめ込まれていて、そこになみなみと注いだ日本酒を佳子が橋本に渡す。
「私は、赤坂のクラブのホステスをした関係で、若い身空で、1軒うまいぐあいに飲食店の暖簾(のれん)分けをしてもらったことがあるのです」
橋本が手を伸ばして、升を受け取る。カウンターのこちら側から佳子の顔を見ながら、質問する。
「そう。いくつのときの話なの?」
「23になるときです。22歳のときに、クラブの得意客と1年間お付き合いをした、見返りに店をもらいました。飲食店を手広く経営する大人物と1年、過ごしましたから」
「ふうん、そうなの。それで、どんな店を始めたの」
「焼き鳥です。友人だった大石が手伝ってくれて、とても繁盛したんです。朝早くからの仕込みも若いから、苦になりませんでした。竹串に肉や野菜をたくさん差して準備するのですが、いつも足らないほど、多くのお客様が、店にいらしてくださいました」
「それは、良かった」
「ええ。1日が短く感じるくらい、店はうまくいきました。大石の実家は、もともと酒屋で、食材に合う酒を選ぶのが、大石はとても上手なのです」
「そうだったのか。大石さんは、酒屋のせがれか。ここで飲む酒がおいしく感じるのは、そのせいだったのだね」
「はい」
佳子が笑うと、ぱあっと店内が明るくなる。
「いやいや、ママのその笑顔。それを見るのも客の楽しみだね。心がなごむね。ママには、人をいやす力があるよ。だから、店の繁盛は、大石さんとママの二人三脚の成果だね」
「私は、赤坂のクラブのホステスをした関係で、若い身空で、1軒うまいぐあいに飲食店の暖簾(のれん)分けをしてもらったことがあるのです」
橋本が手を伸ばして、升を受け取る。カウンターのこちら側から佳子の顔を見ながら、質問する。
「そう。いくつのときの話なの?」
「23になるときです。22歳のときに、クラブの得意客と1年間お付き合いをした、見返りに店をもらいました。飲食店を手広く経営する大人物と1年、過ごしましたから」
「ふうん、そうなの。それで、どんな店を始めたの」
「焼き鳥です。友人だった大石が手伝ってくれて、とても繁盛したんです。朝早くからの仕込みも若いから、苦になりませんでした。竹串に肉や野菜をたくさん差して準備するのですが、いつも足らないほど、多くのお客様が、店にいらしてくださいました」
「それは、良かった」
「ええ。1日が短く感じるくらい、店はうまくいきました。大石の実家は、もともと酒屋で、食材に合う酒を選ぶのが、大石はとても上手なのです」
「そうだったのか。大石さんは、酒屋のせがれか。ここで飲む酒がおいしく感じるのは、そのせいだったのだね」
「はい」
佳子が笑うと、ぱあっと店内が明るくなる。
「いやいや、ママのその笑顔。それを見るのも客の楽しみだね。心がなごむね。ママには、人をいやす力があるよ。だから、店の繁盛は、大石さんとママの二人三脚の成果だね」