「夏も、お昼まで、眠っているの?」
「夏は、暑くて寝てられない。起き出してゴキブリのような生活をする」
「夏は、何回くらい泳ぐの?」
「あまり泳がないよ。仕事も休めないし。2、3回かな」
交差点で信号待ちをする。30秒ほどで、赤から青に変わるが宏樹は気づかない。伝えようかと思うが、自分が運転する時、助手席から指示されるのは、私は好まない。宏樹が気づくまで黙っていようと考え直す。ところがしばらく気づかず、宏樹は何か考えている。やっと我に返り、アクセルを踏む。
同じ経験をしたことがある。恭介とのドライブだ。レストランで夕食を済ませ、私の家に送ってもらう帰り道である。赤から信号が青に変わるのに、恭介は気づかなかった。このときも私は黙って、知らせなかった。私の家までは道路を直進であったが、なぜか右折した。恭介が理由を何も語らないので、私は聞くに聞けず、口を閉じていた。恭介は会話をしなかった。
河川敷に車を乗り入れた。自分の生まれた、街の川原は知っていたが、その場所に車で入ったことはなかった。ブレーキを掛け、停車させると、すぐに恭介が私におおいかぶさってきた。そのとき初めて、私は恭介が信号待ちで何を考えていたのかがやっとわかった。
宏樹は黙っている。あのときと同じである。私はあせり、話しかけようと努める。
「さっき、写真撮ればよかったね」
「さっきって?」
宏樹が会話に付いてくる。
「2枚、使っちゃえばよかったね」
「2枚って?」
「写してあげたんだから、私たちの分も1枚、写させてって」
「見返りを期待しちゃいけないんだ」
宏樹が答えを返してくれたので、ほっとするが、とっさのおしゃべりなのでまったくロジカルでない。支離滅裂な問いかけで、我ながら恥じる。大通りを反れ、宏樹は左の分岐点を折れ、運転する。日は落ちた。無人の駐車場に入り込む。そして、宏樹はエンジンを切る。やっぱり、来たかと予想通りなので、私は驚かない。でも、宏樹が話しかけないので、緊張する。話さないので、さらに静寂が広がる。遠くで波の音が聞こえる。
「ねえ」
やっと、宏樹が口を開く。
「え?」
私は、言葉少なに返事する。
「髪をさわってもいい?」
「えっ?」
「ずっと、さわりたかったんだ、サラサラしているから」
笑うに笑えず、泣くに泣けず。夏から、あまり長さをカットしなかったので5センチは伸びた。宏樹の指が私の額から後頭部に髪をすき始める。
「夏は、暑くて寝てられない。起き出してゴキブリのような生活をする」
「夏は、何回くらい泳ぐの?」
「あまり泳がないよ。仕事も休めないし。2、3回かな」
交差点で信号待ちをする。30秒ほどで、赤から青に変わるが宏樹は気づかない。伝えようかと思うが、自分が運転する時、助手席から指示されるのは、私は好まない。宏樹が気づくまで黙っていようと考え直す。ところがしばらく気づかず、宏樹は何か考えている。やっと我に返り、アクセルを踏む。
同じ経験をしたことがある。恭介とのドライブだ。レストランで夕食を済ませ、私の家に送ってもらう帰り道である。赤から信号が青に変わるのに、恭介は気づかなかった。このときも私は黙って、知らせなかった。私の家までは道路を直進であったが、なぜか右折した。恭介が理由を何も語らないので、私は聞くに聞けず、口を閉じていた。恭介は会話をしなかった。
河川敷に車を乗り入れた。自分の生まれた、街の川原は知っていたが、その場所に車で入ったことはなかった。ブレーキを掛け、停車させると、すぐに恭介が私におおいかぶさってきた。そのとき初めて、私は恭介が信号待ちで何を考えていたのかがやっとわかった。
宏樹は黙っている。あのときと同じである。私はあせり、話しかけようと努める。
「さっき、写真撮ればよかったね」
「さっきって?」
宏樹が会話に付いてくる。
「2枚、使っちゃえばよかったね」
「2枚って?」
「写してあげたんだから、私たちの分も1枚、写させてって」
「見返りを期待しちゃいけないんだ」
宏樹が答えを返してくれたので、ほっとするが、とっさのおしゃべりなのでまったくロジカルでない。支離滅裂な問いかけで、我ながら恥じる。大通りを反れ、宏樹は左の分岐点を折れ、運転する。日は落ちた。無人の駐車場に入り込む。そして、宏樹はエンジンを切る。やっぱり、来たかと予想通りなので、私は驚かない。でも、宏樹が話しかけないので、緊張する。話さないので、さらに静寂が広がる。遠くで波の音が聞こえる。
「ねえ」
やっと、宏樹が口を開く。
「え?」
私は、言葉少なに返事する。
「髪をさわってもいい?」
「えっ?」
「ずっと、さわりたかったんだ、サラサラしているから」
笑うに笑えず、泣くに泣けず。夏から、あまり長さをカットしなかったので5センチは伸びた。宏樹の指が私の額から後頭部に髪をすき始める。