アルバムを見終えて、宏樹の父親と家庭菜園の小さな畑を覗き込む。晴れているので、それほど風は冷たくない。
 「宏樹がドライブに行こうって言っていたから、町を見てきなさい」
宏樹の車の置いてある駐車場へ、歩いて行く。
 「夕食までに戻ってくること、気をつけて」
と父親に見送られる。助手席に乗り込むときにロングコートのすそを、お父さんに、
 「ほら、ほら」
車のドアに挟みそうになり、持ち上げてもらう。手を振り、出発する。宏樹は、車を運転しながら、CDをガチャガチャ、操作しようとする。
 「危ないので、私が見るから」
宏樹に指示されたディスクを再生する。
 「ここのカーブは、思ったより、キツいんだよ」
どうでもいい道路事情まで、宏樹は私に解説する。
 「きょうは時間がないから、残念だな。おいしいケーキ屋があるんだけどなぁ」
 「それは、惜しいわね」
答えながら、なぜ甘味どころの情報を宏樹は知っているのか不安になる。私は半年前まで、恭介と交際していたが別れた。宏樹に、誰かカノジョがいたとしても不思議はない。宏樹は、交際相手はいないと秋に宣言したが、女の友人くらいいるだろう。確認したいが、自分から聞き出せないので、距離があるのに頻繁に会えば、それがわかるかもしれないと無意識に考え、私は宏樹に会おうとするのだろうか。もう、私の気持ちは引き返せない。今は隣に座り、ハンドルを握る宏樹の優しい声に満足しているが、明日になればまた心配になるのだろう。舗道をジョギングしている男性を追い抜いて、車が走る。 
 「よく、やるなぁ」
 「ヒロくんはジョギングしないの?」
 「しない」
 「どうして?」
 「疲れる」
 「私は、秋まで走っていたけれど、寒くなったので、やめちゃった」
 「俺も夏に2日だけ、走った」
 「2日」
 「そう。親父に3日坊主よりヒドいと、怒られた」
交差点を通ろうとしたら、黄色信号がすぐに赤に変わり
 「あ~」
2人で、叫び声を上げる。話に夢中になると危ない。