「畑が夏とは、雰囲気が違うわね」
宏樹の家の家庭菜園は、だいぶ広さがある。私が、冬の畑の感想を宏樹に告げると、驚いたように振り返る。
「えっ、そうかな」
「夏はとうもろこしが周りに茂っていて、中がよく見えなかったのよ」
「そうだった?」
「ええ」
庭の門を開け、宏樹が私を先に通す。玄関に立つ。新年の挨拶を宏樹の両親と交わし、昨夏の礼も告げる。年明け早々、ここにやって来ることになったのには、宏樹と私のメールのやりとりと、携帯での会話が理由である。今年、私は24歳になる。宏樹は、一足早く昨年12月に24歳になった。まったくの同い年である。私は、結婚に追い立てられるような圧迫感を常に覚える。友人は1人、また1人と嫁いでいく。もう何人の披露宴に出席しただろう。早い場合は、卒業と同時に結婚した者もいる。
もちろん、相手が誰でもいいわけではない。じっくり観察して判断し、見極めたい。だが、私が好きになった相手は、親の知人の息子である。親を通じて知り合ったところにややこしさがある。今朝も出掛けには、母に世話を焼かせてしまった。朝早く、近所の農家から「しいたけ」を分けてもらった。正月が明けて間もないので、前もって準備することができなかった。農家のお宅に伺い、朝食後、大きくて形の良いしいたけを譲ってもらった。それを贈答用に箱に包んでもらい、「お年賀」として持参した。ここに到着するまでに母にそんな算段をかけた。結婚を意識し過ぎるのは変だが、理屈抜きで私が宏樹を好きなので、こうして会いたいのである。
宏樹のお宅を訪問するのに、親がかり総出である。たった2人だけで、そっとデートすればいいものを、横須賀と甲府の距離があるので、内緒にできない。九段下、横浜でも日帰りデートだったが、まるまる1日を費やした。きょうも、私は夜には帰宅する。陽だまりの中で、お茶を飲みながら宏樹のお宅のアルバムを見る。私の弟が小学生の時の写真がアルバムに貼ってある。ユニフォームを弟に贈ったのは宏樹の父である。野球ユニフォーム姿の弟の写真を撮影したのは私の父で、写真を郵送したのは、私の母だ。宏樹が驚いている。
「どこの家の子の写真かなと思ってはいたんだ」
宏樹が困惑するのも無理はない。宏樹は自分の父親からはきっと何も聞いていないだろう。男同士で話す内容ではない。私は母の様子を見て知った。母は若いときに、多分、宏樹の父親を好きだったのである。
宏樹の家の家庭菜園は、だいぶ広さがある。私が、冬の畑の感想を宏樹に告げると、驚いたように振り返る。
「えっ、そうかな」
「夏はとうもろこしが周りに茂っていて、中がよく見えなかったのよ」
「そうだった?」
「ええ」
庭の門を開け、宏樹が私を先に通す。玄関に立つ。新年の挨拶を宏樹の両親と交わし、昨夏の礼も告げる。年明け早々、ここにやって来ることになったのには、宏樹と私のメールのやりとりと、携帯での会話が理由である。今年、私は24歳になる。宏樹は、一足早く昨年12月に24歳になった。まったくの同い年である。私は、結婚に追い立てられるような圧迫感を常に覚える。友人は1人、また1人と嫁いでいく。もう何人の披露宴に出席しただろう。早い場合は、卒業と同時に結婚した者もいる。
もちろん、相手が誰でもいいわけではない。じっくり観察して判断し、見極めたい。だが、私が好きになった相手は、親の知人の息子である。親を通じて知り合ったところにややこしさがある。今朝も出掛けには、母に世話を焼かせてしまった。朝早く、近所の農家から「しいたけ」を分けてもらった。正月が明けて間もないので、前もって準備することができなかった。農家のお宅に伺い、朝食後、大きくて形の良いしいたけを譲ってもらった。それを贈答用に箱に包んでもらい、「お年賀」として持参した。ここに到着するまでに母にそんな算段をかけた。結婚を意識し過ぎるのは変だが、理屈抜きで私が宏樹を好きなので、こうして会いたいのである。
宏樹のお宅を訪問するのに、親がかり総出である。たった2人だけで、そっとデートすればいいものを、横須賀と甲府の距離があるので、内緒にできない。九段下、横浜でも日帰りデートだったが、まるまる1日を費やした。きょうも、私は夜には帰宅する。陽だまりの中で、お茶を飲みながら宏樹のお宅のアルバムを見る。私の弟が小学生の時の写真がアルバムに貼ってある。ユニフォームを弟に贈ったのは宏樹の父である。野球ユニフォーム姿の弟の写真を撮影したのは私の父で、写真を郵送したのは、私の母だ。宏樹が驚いている。
「どこの家の子の写真かなと思ってはいたんだ」
宏樹が困惑するのも無理はない。宏樹は自分の父親からはきっと何も聞いていないだろう。男同士で話す内容ではない。私は母の様子を見て知った。母は若いときに、多分、宏樹の父親を好きだったのである。