新大津駅で京浜急行の電車を降りる前から、宏樹がきっと改札前に迎えに来てくれているだろうということは、予想していた。だが、なんとなく宏樹を探すような素振りをしたくなくて、ゆっくりホームから続く階段を1段ずつよく見て、下に向かう。改札で切符を返却する少し前にちらっと顔を上げると、宏樹が私を見ていて、手持ち無沙汰の様子をしている。
「ここからなら、1人でもお宅に行けるのに。夏の記憶がまだ残っているから」
私が話しかけると宏樹が、笑う。宏樹は紺色の真新しい半纏(はんてん)を身に着けている。
「持つよ」
と言って私の荷物を見る。
「じゃ、これ・・・ヒロくん専用のものだから」
私が手提げから包みを取り出し、渡す。
「? 灰皿かな」
重さから判断して、宏樹がつぶやく。
「当たり。昨日、スキーに行って来たので、そこのお土産よ」
「どこに?」
「越後中里(えちごなかざと)っていうところ」
「越後っていうと新潟?」
「そう。日帰りで行けるの」
「もう、雪、降ってるの?」
「甲府はまだだけれど、山は降ってる」
「昇仙峡(しょうせんきょう)は?」
「うん、もうすごい」
「へぇ」
「あら、床屋さんは?」
「結局、行かなかった」
宏樹が、電話で、午前中は理髪に行ってくると言っていたが、髪が短く刈られていないので、すぐ見てわかる。
「睡眠時間を優先して、床屋、パスした、ず~っと寝てたから」
「そうだったの」
通勤が重労働なので、宏樹が休日は、ほとんど眠って過ごすと言うのは本当のようである。正月が過ぎたばかりの最初の日曜日である。でもまだ気持ちのうえでは、正月休みが続いている。宏樹は民間企業のサラリーマンなので4日に仕事初めで出勤し、またすぐ週末の土日を迎えている。私は学校に勤めているので、明日から第3学期が始まる。
「私も休みの日は、10時ごろまで眠っているわよ」
「俺なんか、昼までだよ」
「ふうん、あれ、やっぱり1人じゃ、道、分からなかったみたい」
「だろ? よその家に入って行かれたら、困るなぁ」
宏樹は、私が宏樹の家までの道順を覚えていなかったと言うと、嬉しそうに笑顔を向ける。
「ここからなら、1人でもお宅に行けるのに。夏の記憶がまだ残っているから」
私が話しかけると宏樹が、笑う。宏樹は紺色の真新しい半纏(はんてん)を身に着けている。
「持つよ」
と言って私の荷物を見る。
「じゃ、これ・・・ヒロくん専用のものだから」
私が手提げから包みを取り出し、渡す。
「? 灰皿かな」
重さから判断して、宏樹がつぶやく。
「当たり。昨日、スキーに行って来たので、そこのお土産よ」
「どこに?」
「越後中里(えちごなかざと)っていうところ」
「越後っていうと新潟?」
「そう。日帰りで行けるの」
「もう、雪、降ってるの?」
「甲府はまだだけれど、山は降ってる」
「昇仙峡(しょうせんきょう)は?」
「うん、もうすごい」
「へぇ」
「あら、床屋さんは?」
「結局、行かなかった」
宏樹が、電話で、午前中は理髪に行ってくると言っていたが、髪が短く刈られていないので、すぐ見てわかる。
「睡眠時間を優先して、床屋、パスした、ず~っと寝てたから」
「そうだったの」
通勤が重労働なので、宏樹が休日は、ほとんど眠って過ごすと言うのは本当のようである。正月が過ぎたばかりの最初の日曜日である。でもまだ気持ちのうえでは、正月休みが続いている。宏樹は民間企業のサラリーマンなので4日に仕事初めで出勤し、またすぐ週末の土日を迎えている。私は学校に勤めているので、明日から第3学期が始まる。
「私も休みの日は、10時ごろまで眠っているわよ」
「俺なんか、昼までだよ」
「ふうん、あれ、やっぱり1人じゃ、道、分からなかったみたい」
「だろ? よその家に入って行かれたら、困るなぁ」
宏樹は、私が宏樹の家までの道順を覚えていなかったと言うと、嬉しそうに笑顔を向ける。