車高のある2階席からは、道路がよく見える。警察官が、道路脇で駐車違反を取り締まっている。
「貼ってる、貼ってる」
と、宏樹は喜んでいる。高速道のガード下をくぐって進んで行く。
「関内(かんない)駅で降りよう」
私は、宏樹の言葉に従う。バスを降りて、歩く。
「関内駅のアナウンスって、面白いよね。ここは、関内。ここ、わかんないって・・・」
さあ、また宏樹の駄洒落が始まったか・・・。繁華街を通り抜ける。
「ここは、歌にある、伊勢佐木町(いせさきちょう)だよ」
「ふん、ふん」
うなづきながら、宏樹の腕につかまる。宏樹の左腕は、そろそろ私が独り占めしてもいいだろうか。私が宏樹の腕をぐいっとつかむと、宏樹は嬉しそうに、急に話し始める。
「さっきと同じタイルが、道路にはめ込んであるだろ?」
「本当ね」
少し歩くと、宏樹は自販機で煙草を買う。
「ごめん、禁断症状」
「うっ・・・、喫茶店に入りましょうか」
歩きながらの喫煙は、マナーに反する。そろそろ、のども渇いたので、宏樹が知っているという店に入る。宏樹は、ココア、私はキウイシャーベットを頼む。
「会社へは、どういうルートで通っているの?」
宏樹の通勤が相当、過酷な様子なので、尋ねる。
「まず、京浜急行で横浜まで、横浜から渋谷まで東横線。渋谷から井の頭線で明大前(めいだいまえ)、明大前から京王線で調布」
「うわ、3回も乗り換えるのね、ねえ、南武線は使わないの? 登戸(のぼりと)を通る、南武線」
「ああ、でも距離じゃなく、時間が優先なんだ」
私が登戸を知っているのは、就職活動で、面接試験を受けた企業が登戸にあるからだ。女子の採用は自宅通勤でないと、その企業には合格できないと先輩から聞かされた。まさか今時、1人暮らしを理由にして女子を採用しないことがあるだろうかと思い、試験を受けたが不合格だった。私は地方出身者なので、東京で生活するなら、1人暮らしするしかない。通勤範囲内の親元からでないと採用しないなんて、差別である。男なら許可だが、女は不合格。社会人となった今でもその不可思議さに納得できないので、しっかり覚えている。
受験者6人一緒の面接だった。試験官とのやりとりで、誰と誰がパスし、通らないのは誰か、その場に居合わせた者なら判断できる。私は絶対の自信があった。だが、落とされた。学生が社会の入り口で性差を受けた。人物本位でなく、大人の勝手な見方で女子学生は選別される。
「貼ってる、貼ってる」
と、宏樹は喜んでいる。高速道のガード下をくぐって進んで行く。
「関内(かんない)駅で降りよう」
私は、宏樹の言葉に従う。バスを降りて、歩く。
「関内駅のアナウンスって、面白いよね。ここは、関内。ここ、わかんないって・・・」
さあ、また宏樹の駄洒落が始まったか・・・。繁華街を通り抜ける。
「ここは、歌にある、伊勢佐木町(いせさきちょう)だよ」
「ふん、ふん」
うなづきながら、宏樹の腕につかまる。宏樹の左腕は、そろそろ私が独り占めしてもいいだろうか。私が宏樹の腕をぐいっとつかむと、宏樹は嬉しそうに、急に話し始める。
「さっきと同じタイルが、道路にはめ込んであるだろ?」
「本当ね」
少し歩くと、宏樹は自販機で煙草を買う。
「ごめん、禁断症状」
「うっ・・・、喫茶店に入りましょうか」
歩きながらの喫煙は、マナーに反する。そろそろ、のども渇いたので、宏樹が知っているという店に入る。宏樹は、ココア、私はキウイシャーベットを頼む。
「会社へは、どういうルートで通っているの?」
宏樹の通勤が相当、過酷な様子なので、尋ねる。
「まず、京浜急行で横浜まで、横浜から渋谷まで東横線。渋谷から井の頭線で明大前(めいだいまえ)、明大前から京王線で調布」
「うわ、3回も乗り換えるのね、ねえ、南武線は使わないの? 登戸(のぼりと)を通る、南武線」
「ああ、でも距離じゃなく、時間が優先なんだ」
私が登戸を知っているのは、就職活動で、面接試験を受けた企業が登戸にあるからだ。女子の採用は自宅通勤でないと、その企業には合格できないと先輩から聞かされた。まさか今時、1人暮らしを理由にして女子を採用しないことがあるだろうかと思い、試験を受けたが不合格だった。私は地方出身者なので、東京で生活するなら、1人暮らしするしかない。通勤範囲内の親元からでないと採用しないなんて、差別である。男なら許可だが、女は不合格。社会人となった今でもその不可思議さに納得できないので、しっかり覚えている。
受験者6人一緒の面接だった。試験官とのやりとりで、誰と誰がパスし、通らないのは誰か、その場に居合わせた者なら判断できる。私は絶対の自信があった。だが、落とされた。学生が社会の入り口で性差を受けた。人物本位でなく、大人の勝手な見方で女子学生は選別される。