
芝生の広場の中を横切って抜ける。先には、理解に苦しむ石の彫刻が待っている。私がしきりに首をかしげ、考えていると、
「女性っていうタイトルだよ」
宏樹がヒントを出してくれる。
「あっ、横になっているわけね」
「そう」
女性の胸が、左右ではなく、上下に位置している。
「最初、げんこつかと思っちゃった」
「はは・・・」
道路に出る。
「外人墓地に行って見ようか?」
「わぁ、いいわね」
道の向こう側に墓地が広がっている。
「しかし、カップル、ツーショットが多いな」
「そりゃ、そうよ」
「男が2人、寄り添って歩いているのよりはいいけど。そういうのを見ると殴りたくなる」
すぐ、近くでは建設中の建物があり、機械音が響いている。
「なんかムードを壊してるな」
墓は、鉄柵が邪魔をして見えにくい。舗道脇の石段に乗れば、見渡せそうである。宏樹は身長があるので問題ないが、私には充分見ることができない。
「乗ると怒られるかしら?」
「大丈夫だよ」
「芸能人のお墓なんかもあるんでしょ?」
「えーっ、どうだろ? 外国人のだけじゃないのかな」
「あっ、あの墓石の形はマニキュアの瓶みたい」
「どれ?」
「あの白いの」
「本当だ」
宏樹は、墓石に刻まれた英文を読んでいる。「Sep.1.1923」と表記がある。
「ねえ、関東大震災って、西暦何年だっけ?」
宏樹に質問する。
「えっと、大正13年だから・・・、1922年くらいかなぁ」
「ね、さっき数字をいくつ引くって言ってた?」
「忘れた」
「1923年じゃなかった?」
「じゃ、あれは関東大震災の日のことかな」
墓地の、はす向かいで、道路の反対側にある店を指差して、宏樹が言う。
「あのレストランは食材が良くて、おいしいんだよ」
見ると、三条旗がはためいている。
「フランス料理?」
「まだ、お腹いっぱいだよね」