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 土産物を置いてある売店を覗く。元町の舗道に敷いてあったタイルも売っている。
 「タイルの絵は削ってあるのかしら」
 「違う。描いてあるんだよ」
宏樹が教えてくれる。タイルの用途は結構ありそうだ。鍋敷きになるし、文鎮代わりにもなる。何より、記念になるので、2枚買う。
 マリンタワーの裏口に向かう。
 「お昼休みにテレビを見ないなら、何をして過ごすの?」
宏樹に尋ねる。
 「トランプ」
 「うっく。何、それ。まるで中学生じゃない?」
 「大貧民は面白いよ」
 「ということは、もしかしてお金賭けてるの?」
 「少し」
 「やっぱり、悪いことしてるじゃない」
 「賭けたお金を貯めて、1年経ったら、新しいトランプを買うんだ」
 「・・・そうね、トランプを新調しないと、傷がついて、使い物にならなくなるし、手がわかっちゃうからよね」
ため息をついて、宏樹に同調する。私には、どうでもいいことに真剣になる人のようである。会話するうちに、宏樹を冷静に見られるかもしれないと思い始める。すると、宏樹は私の額に手を当てる。
 「熱でもあるんじゃないの?」
ならば、今のは冗談だということになる。トランプを買うというのはウソである。よく考えれば当たり前である。まさか、新しいトランプを買うために、金を賭けるはずもない。私が親身に相槌を打っているのに、悔しさを感じてくる。
 裏口で、5歳くらいの女の子がドアが重くて開けるのに苦労している。
 「おじさんが手伝ってあげよう」
宏樹はナレーションをつけて、ドアを開ける。宏樹はフェミニストだ。それは、私も認める。夏には私が手にしている帽子まで持ってくれた。
 「山梨から東京の大学を卒業したなんて、すごいと思われているんじゃないの?」
宏樹の長所を1つずつ列挙しようと考えていると、不意に質問される。
 「えっ?」
 「パレードしてもらったり、花火が上がるんじゃないの?」
 「失礼ね」
私をコケにするのが快感のようである。それは、やっぱり減点。メルパルクの前を通り、昔からあるという「谷戸橋」を渡る。
 「外に出ると寒いね。寒くない?」
宏樹の言葉にうなづく。そして、また肩を抱かれる。優しいよね。もう、採点できない。点数をつけるのは無理だとわかり、私は諦める。