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 男性の心理は、わからない。先日のデートも、きょうも誘ったのは私の方だ。好きなので、会いたい気持ちが先に立つ。誘われるのを少し待ったが、九段下で会って以来、誘われはしない。手紙のやりとりと、電話とメールの交換はしても、宏樹から「会おう」と言われなかった。2カ月が経って、私はしびれを切らした。「会わない?」と誘ったのは私である。第六感が働くというが、私の方が宏樹に惚れている。彼からは好かれてはいない。感覚でわかるのである。
 それなのに、宏樹は会えば、私の体に触れてくる。私でなくても、誰でもいいのである。そこが悲しい。そして、今度は恭介のことになるが、一度自分の女にしてしまえば、自然消滅を狙う。べつに、別れるのに挨拶をしてからにしろとは言わない。でも、興味が薄れたら、女が何か言わなければ、しめた、これ幸い、知らぬ存ぜぬで、それっきりである。なんの交際もなかったように、音沙汰1つなく、4カ月以上もだんまりをよく通せるものだ。
 私なら、1週間、10日、2週間と、ご機嫌伺いを徐々に遠ざけ、それから離れる。それくらいは相手に気を遣うのが礼儀ではないだろうか。ぷっつりは、あんまりである。恭介との交際がトラウマになり、私は自己嫌悪に陥っている。自分なんか好かれるはずない。自分は一体どこがいいのか。私はもし自分が好かれると思っているなら、なんて間抜けなんだろう。心の底から沸いてくる自暴自棄の声に、涙がこみ上げる。
 宏樹の心をしっかりつかんでからでなくては、これ以上、体に触れられるのはお断りである。少し、乱暴かもしれないが、私の肩を抱えている宏樹の左手を振り払う。
 「暑いから・・・ごめん」
 「なんだ、つまんない」
宏樹は驚いたようだ。私だって怒る。むやみにタッチしないでほしい。別にガードが固いとか、スキがないと思われたいのではない。もちろん、大好きだから、ずっと一緒にいたいし、仲良くしたい。宏樹と羽目をはずして、突っ走ってみたい。宏樹に抱きつきたいのは本当は私の方だ。いつも意地を張り、しっかりした風をして、生徒の前でいっぱしを決めている。特別に何ができるわけではない。18歳の生徒より5歳上なだけである。偉くも強くもなく、知識も大して変わらない。なのに、無理やり背筋を伸ばし、教師を気取っている。好きな男性には甘えたいし、グチもたっぷり聞いてもらいたい。大きな手の長い指で、私の涙を拭いて慰めてほしいのに。なぜ今も突っ張らなくてはならないのか。