駅の構内は、歩いてきた道のりと違って明るい。腕を組んでいては、さすがに照れるので、宏樹の腕から手を抜くと、
「もう少し、つかまっててもいいのに・・・」
と言ってくれる。日本橋駅までの切符を買って、一緒に乗り込む。座席は空いているので、並んで座れる。引出物の袋をひざの上に置いているので、
「重いから下に降ろして」
と伝えるが、宏樹はムキになって抱える。
「袋が汚れるだろ」
「汚れても、構わないから」
諭しても、背中を丸めて大きな袋を抱えている。心の中で「強情っぱり」と思う。そんなにいい男ぶると疲れるぞと、心配する。
「どう? きょうは暇がつぶれた?」
宏樹に尋ねられて、半日、付き合わせてしまったと感じる。良かったのだろうか。私は楽しかったが、宏樹はどうなのだろう。でも、素直に感謝の言葉は伝えられない。
「つぶれたわよ」
こういうときは、やっぱり「ありがとう」を言うべきなのだろう。私は、強がりで駄目である。日本橋駅に着き、隣のプラットホームへ移動するため、階段を降りる。
「ちょっと待って、髪に葉っぱ付いてる」
と言われ、階段を降り切る前に、人通りを避けて、立ち止まる。神保町(じんぼうちょう)まで行き来したときに街路樹の下を通った。そのときに落ちてきたのだろう。もう、秋だもの。
「髪にさわっても、いい?」
「ええ、取って」
と言い終わらないうちに、くちびるにさっと、宏樹の口が近づいた。胸をタッチされたのと、くちびるに触れられたのは、ほぼ同時で一瞬、時が止まる。
「そんな」
会って、まだ2回目である。スタンプラリーじゃあるまいし、胸も口もポンポンと、はんこを押された。
「髪にさわるって言った・・・」
私は怒り、宏樹の左脚を蹴飛ばすが、うまく、逃げられかわされてしまう。ステップの段差を利用し、身長差をうまく解消されキスされた。そうか、きょうは会って3回目だ。子供の頃、1度会っているので、3回目である。うかつだった。
「さぁて、どっちが早く家に着くかな」
「私の方が遠いわ」
「暇がとれたら、連絡するよ」
まだ私には悔しさが残っていて、宏樹の言葉に嬉しがっては、うなづけない。さっきのは、まさか悪ふざけではないだろう。キスといっても、瞬間に触れただけではあるが。
「ねぇ、お鍋ほしい?」
荷物が重いのは御免だなと思い、聞いてみる。
「いるか、そんな物」
「え~ん、重そう」
「腕を鍛えるのも、時には必要!」
冷たく、突き放される。
「もう少し、つかまっててもいいのに・・・」
と言ってくれる。日本橋駅までの切符を買って、一緒に乗り込む。座席は空いているので、並んで座れる。引出物の袋をひざの上に置いているので、
「重いから下に降ろして」
と伝えるが、宏樹はムキになって抱える。
「袋が汚れるだろ」
「汚れても、構わないから」
諭しても、背中を丸めて大きな袋を抱えている。心の中で「強情っぱり」と思う。そんなにいい男ぶると疲れるぞと、心配する。
「どう? きょうは暇がつぶれた?」
宏樹に尋ねられて、半日、付き合わせてしまったと感じる。良かったのだろうか。私は楽しかったが、宏樹はどうなのだろう。でも、素直に感謝の言葉は伝えられない。
「つぶれたわよ」
こういうときは、やっぱり「ありがとう」を言うべきなのだろう。私は、強がりで駄目である。日本橋駅に着き、隣のプラットホームへ移動するため、階段を降りる。
「ちょっと待って、髪に葉っぱ付いてる」
と言われ、階段を降り切る前に、人通りを避けて、立ち止まる。神保町(じんぼうちょう)まで行き来したときに街路樹の下を通った。そのときに落ちてきたのだろう。もう、秋だもの。
「髪にさわっても、いい?」
「ええ、取って」
と言い終わらないうちに、くちびるにさっと、宏樹の口が近づいた。胸をタッチされたのと、くちびるに触れられたのは、ほぼ同時で一瞬、時が止まる。
「そんな」
会って、まだ2回目である。スタンプラリーじゃあるまいし、胸も口もポンポンと、はんこを押された。
「髪にさわるって言った・・・」
私は怒り、宏樹の左脚を蹴飛ばすが、うまく、逃げられかわされてしまう。ステップの段差を利用し、身長差をうまく解消されキスされた。そうか、きょうは会って3回目だ。子供の頃、1度会っているので、3回目である。うかつだった。
「さぁて、どっちが早く家に着くかな」
「私の方が遠いわ」
「暇がとれたら、連絡するよ」
まだ私には悔しさが残っていて、宏樹の言葉に嬉しがっては、うなづけない。さっきのは、まさか悪ふざけではないだろう。キスといっても、瞬間に触れただけではあるが。
「ねぇ、お鍋ほしい?」
荷物が重いのは御免だなと思い、聞いてみる。
「いるか、そんな物」
「え~ん、重そう」
「腕を鍛えるのも、時には必要!」
冷たく、突き放される。