「もうっ」
──痛いってば。

自分を玩具にする二人の手を、真理愛は振り払おうとする。
笑うどころか至って真面目な面持ちで見詰められ続け、羞恥が迫ってくる。
実際には殆ど感じる事がないくらいの力加減だったが、限界だった。
簡単には自由にくれないだろうと思っていたが、ところが双子の手は拍子抜けする程にあっさりと離れていった。

「変じゃなかったどころかメチャ可愛かっただけど、今の変顔で許してあげる」

ぽかんとする真理愛の頭上を、利音が軽く叩く。
いよいよ意味が分からなくなった真理愛に、利音はからかいの笑みを浮かべる。狭まった目に瞬間惹き込まれそうになり、真理愛は慌てて我に返る。
『許してあげる』なんて、何様のつもりなのだろう。
上から目線で情けをかけられ、納得いかないどころの話ではなかった。

「許してやるって、あのね!」
「喧嘩両成敗。これでお互い恨みっこなし」
「はあ!?」
「無視してたじゃん。俺らとの連絡手段全部絶ってさ」

子供のように口を尖らせていじける利音を、真理愛はぴしゃりと撥ね除ける。

「そうさせたのは誰!?」

涸れない泉のように溢れる罵詈雑言が続けて出る間際、ピンク色のリップを塗った真理愛の唇を利音の指先が押し止める。

「死ぬ程心配した。死ぬ程淋しかった。死ぬ程恋しかった。……もう二度と、こんな事しちゃダメだ」
──分かった?

真摯な利音の戒めに、真理愛は言葉を呑み込んだ。