キラキラ光る生糸
リュウ爺の立ち上げた製糸会社の工場(こうば)は、家とは別の場所にあった。
子供の足で20分ぐらいの処。
私は工場に行くのが好きで、学校が終わるとよく行っていた
行くと、まず、父ヨッサンの処へ行き
それから、糸繰場に顔を出す。
工女さんに挨拶すると、皆笑顔で迎えてくれる。
こちらを見ながら、口々に
「あ、ツネまちゃん来たんかい」
「いらっしゃい。ツネまちゃん」
「学校はもう終わったんかい?」
次々と会話してくれる。
でも、糸を繰り出す動作は止まる事は無い
その手、その指は繭から取り出す1本の生糸が常に離れはしない。
キラキラと光る生糸は、工女さんの頭の上にある糸巻機に
クルクルと、スルスルと収まってゆく。
まるで手品のように見えた。
いや、もう魔法だ
キラキラとそれはそれは細~~い糸が、
繭から離れ工女さんの熟練した指に絡まり
上へ上へと昇って行くのだ。
引っ掛かりもせずに
切れもせずに。。。
私は飽きることなく、いつも見ていた。
工女さんの笑顔と糸を・・・
大好きだった。