国立公園=採集禁止か? | 虫けら屋の「ちょっと虫採り行ってくる!」

今回はちょっと小難しい話になりますが、

採集に関わる重要な事なので書いておこうかと。

 

時々、

「国立公園は昆虫採集禁止」なんて話を見聞きする事がありますが、

これは本当でしょうか?

 

…先に答えから言ってしまえば、実はNOです。


昆虫採集が禁止されているのは

国立公園の中でも特別保護地区のみ であり、

それ以外の地域では基本的には昆虫採集は禁止されていません。

 

大事な事なのでもう一度言います。

 

国立公園内で昆虫採集自体が禁止されているのは

特別保護地区だけで、

それ以外は基本的には採集できます。

(※ただし、それ以外の条例などで禁止されている場合もあるので、注意が必要)

 

 

…で、今回はそのことについて法律に触れながら

解説していきたいと思いますので、

興味のある方はぜひご一読を。



日本の国立公園は「自然公園法」という法律に基いています。
当初は「国立公園法」という法律がありましたが、

この法律は1957年(昭和32年)に

現在の「自然公園法」制定に伴い廃止されました。
そんなワケで、国立公園に関わる現行法は「自然公園法」になります。

自分も自然公園法全般について語れるほど詳しいワケではないので、

ここでは「昆虫採集の可否」に関する部分に焦点を絞っていきましょう。

国立公園は、

その中を更にいくつかの地種区分に分類されています。
 

まず大きく「特別地域」と「普通地域」に大別され、

特別地域はその中で更に

特別保護地区

第一種特別地域

第二種特別地域

第三種特別地域

…の4つに分類されます。

つまり、こういうこと↓↓↓

(1)特別地域
  1.特別保護地区
  2.第一種特別地域
  3.第二種特別地域
  4.第三種特別地域
(2)普通地域
  1.普通地域

この中で、昆虫採集が一切禁止されているのは特別保護地区のみになります。
 

自然公園法で言うと、

第二章 国立公園及び国定公園
第四節 保護及び利用
第二十一条
3
特別保護地区内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては環境大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。

 

…の行為として挙げられている中の

九  動物を捕獲し、若しくは殺傷し、

又は動物の卵を採取し、若しくは損傷すること。

になります。
 

ここでいう動物は脊椎動物だけでなく

無脊椎など全ての動物が含まれるため、

昆虫もその中に入るということになります。
 

つまり、

国立公園の特別保護地区内で採集しようと思ったら

環境大臣の許可が必要という事であり、

黙って採集すれば当然法律違反という事になります。

ちなみに

第一種特別地域以下の特別地域についてはこの条文はなく、

基本的には採集は禁止されていません。
 

「ここは国立公園なんだから昆虫採集は禁止だ!」

なんて仰る方がたまにいますが、

これは間違いという事になります。


…ただし、

第二章 国立公園及び国定公園
第四節 保護及び利用
第二十条
3
特別地域(特別保護地区を除く。以下この条において同じ。)内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては環境大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。


…の行為内に、

十三  山岳に生息する動物その他の動物で

環境大臣が指定するものを捕獲し、

若しくは殺傷し、又は当該動物の卵を採取し、

若しくは損傷すること。

という一文があり、

環境大臣によって指定された種については

特別保護地区外の特別地域でも採集できません。
 

つまり、基本的には禁止されていないものの、

何でもかんでも採って良いというワケではないという事です。

まぁそんなワケで、

国立公園内において昆虫採集全般が禁止されているのは

特別保護地区内のみという事になるワケです………

 

…が、しかし。
 

だからと言って辺り構わず無茶な採集をすれば

当然他の方からの反感を買い、

場合によっては他の法律や条例等で採集を禁止されてしまう事も

考えられますので、法で許されているからと言って無茶はいけません。
 

特に離島などの限られた地域の場合、

島民の反感を買えば簡単に採集禁止にされてしまいます。
御蔵島やトカラ列島が良い例ですね。
あれらの島の採集禁止は、完全に採集者の無茶が原因です。

また、昆虫採集は禁止でなくても、

木竹の伐採は第一種特別地域以下の特別地域でも禁止されていますので、

木を切るような無茶をすればそこで法律に抵触しますし、

 

そこまででなくてもゼフィルスの採卵で新芽を取ったり、

トラップ設置や採集で植物を傷付けたりすれば、

それが指定植物だった場合には、

禁止項目「指定植物の損傷」に抵触する事になってしまいます。
 

更に、

土中に生息するような虫の場合、餌として土を持って帰ると、

これが「特別地域での土石を採取禁止」に抵触する可能性も

十分に考えられます。
 

例えば、

八重山にはチャイロマルバネクワガタなんてクワガタがいますが、

石垣島の主だった山のほとんど(バンナ岳・前勢岳を除く)は

特別地域(特保~第三種まで色々)に指定されており、

幼虫持ち帰り用に現地の山の土を持って帰ると、

昆虫採集は良くても土石の採取として法に抵触する可能性が

出てくるワケです。

とどのつまり、

特別保護地区以外の特別地域では、

昆虫採集自体は良くても、

採集の過程で植物を傷付けたり土砂を採取したりすれば、

それによって法に抵触する可能性が出てくるという事です。


…そういった事を踏まえ、

特別保護地区以外は採集禁止ではないと言っても無茶はせず、

気を付けて他の利用者と共存しながら楽しく採集を続けましょ、と。

法律全般を読んでみたい方は、以下のリンクをどうぞ。

<リンク>自然公園法


…あ、ちなみに。


特別保護地区内での無許可禁止事項には

二 木竹を損傷すること。

七 木竹以外の植物を採取し、

  若しくは損傷し、又は落葉若しくは落枝を採取すること。

 

…という一文もあり、

つまり生えている植物の採取は勿論のこと

種子(どんぐり等)落ち葉一枚(モミジなど)

拾って帰ることさえ許されていません
 

特別保護地区外でドングリ拾いやモミジ拾いをしながら

「国立公園は虫採り禁止でしょ」とか文句を言う人には、

「ここが昆虫採集禁止なら、モミジ拾いだって禁止のハズですよね?」

とハッキリ言い返すことができます。


…まぁ、だからって逆手に取ってケンカする必要はないですけどね(笑)