フッチー♀トラップ | 虫けら屋の「ちょっと虫採り行ってくる!」

一気に気温が上がって暖かくなり、

先日のポイントに再度出撃したところ、

フチグロトゲエダシャクの♀(メス)が採れた。

 

このハネもないコロコロしたやつが、

フチグロトゲエダシャクの♀なのである。

 

♂の姿からは想像もつかない姿をしているが、これで立派な成虫。

 

フユシャクと呼ばれるグループの蛾は、

♀がハネがなかったり小さく退化したりしていて飛べない。

フチグロトゲエダシャクもそんなフユシャクの仲間のひとつなのだ。

 

 

…で、せっかく♀が採れたので、

やってみたかったコトにチャレンジすることにした。

 

 

♀トラップによる分布確認

 

 

地元でフッチーを採っている場所は毎年同じで、

いつもほぼ同じ川の土手の同じ辺りで場所で採集している。

 

つい確実な成果を求めてしまうからなのだが、

他の地点にもいるのか?

…は気にはなっていた。

 

そこで役に立つのが♀。

 

フチグロトゲエダシャクの♀は

こんな姿なので当然飛ぶことはできず、

ひたすら歩くだけだ。

 

その代わり、

フェロモンを飛ばして♂を呼び寄せて交尾する。

 

その威力はかなり高く、

枯草原を飛び回る一円玉サイズの♂が

♀のフェロモンを嗅ぎつけると何十メートルも先から飛んできて、

きっちり♀を見つける。

 

歩き回って探していてもポツポツしか見つからないのに、

♀を置いておくだけで2頭3頭と飛んでくるのだ。


要するに、

♀による誘引を利用すれば、

いるのなら高確率で飛んでくるということだ。

 

それなら、いるかどうか分からない場所でそれを利用すれば、

普通に探すより容易に確認ができるというワケ。

 

で、いつものポイントから離れ、川沿いに下ってみた。

…まぁ、離れると言っても同じ市内なので

せいぜい5~6km程度でしかないのだが。

 

…しかし、最近自転車に全く乗っていなかったので、

太ももがキツイ。痛い。

 

歩くのは仕事帰りに2駅歩いたりとかしているのでわりと平気なのだが、

自転車は使う筋肉が全く違う…

 

ヒィヒィ言いながらなんとかまずは1ヶ所目、時間は10時半前。

 

もう♂が飛んでいる時間だが、

予報に反して気温が今一つ上がりきっていない感じ。

だが、川沿いに何ヶ所かでやってみたいので、

とりあえず♀を取り出してやってみる。

仕掛けは簡単で、

百均のザル付きタッパーから中のザルを取り出して檻にしたもの。

 

♀は逃げられないが風は抜けるので、

フェロモンは風に乗って拡散するというワケだ。

 

♀を取り出すと、さっそくコーリングをしている様子。

ザル越しで分かりにくいが、

お尻の先からニュッと飛び出している棒みたいなところから

フェロモンを拡散させている。

 

人間にはまったく分からない匂いだが、

同種の♂には効果覿面(こうかてきめん)らしい。

 

ものの10分かそこらで早速♂が飛来した。

そこから5分ほどでまた1♂。

 

なるほど、これは確かにいるかどうか分からないポイントでの確認にはもってこいだ。

1~2度振り逃しながらもなんとか2♂採集して、更に進むことにする。

今回はガンガン採集というより、

いるかどうかの確認なので2♂も採れれば十分。

 

少し…と言っても1.5km程度だが、土手を進んで再び♀を取り出す。

…が、今度はなかなか飛んでこない。

 

20分ほど待ってようやくソレっぽいのが姿を見せるが、

そのまま通り過ぎて行ってしまった。

とは言え、飛んでくるならもう少し待てば…

 

…と思って待ってみたものの、1時間待っても次が飛んでこない。

いるにはいるが、かなり少ないということか?

 

たった1.5kmかそこらなのに、ずいぶん違うものだ。

 

更に先に進むと、少しずつ環境が変わってくる。

何度か試すものの、飛んでくる気配がない。

どうも一定以上先まで川を進むといなくなってしまう…?

 

太ももの痛みにヒィヒィ言いながら市境のギリギリまで行ってみたが、

残念ながら見られず。

時間も14時を過ぎて、ゴールデンタイムも終わってしまった。

 

…フチグロトゲエダシャクが最も活発に飛ぶのは昼前頃。

朝、気温が上がってくると飛び始め、

昼頃にピークを迎え、

13時を過ぎる頃にはあまり見られなくなってしまう。

 

場合によっては、

ネットで「昼を過ぎるとまったく見られなくなる」と

書かれていることもあるぐらいだが、個人的な感覚としては

昼を過ぎると数はかなり減るが、♀がフェロモンさえ飛ばせば

3時ぐらいまではポツポツとは飛ぶ」。

 

…なので、

14時過ぎともなると個体数の多い場所ならまだ見られるが、

いるかどうかも分からない、薄い場所だと厳しいか…と

引き上げることにした。

 

土手の道を自転車で戻っていくと、

午前中最初にやったポイントを越えて更に戻ったあたり、

白っぽいのが飛んだのが目に入った。

 

今シーズンも何頭も見て、今日も2頭見ているのですぐに

「フッチーまだ飛んでるやん!」

と気付く。

 

時刻は既に14時半を過ぎている。

 

でも、どうせなら…と♀トラップを出してみたところ、

 

ものの5分で2♂が飛来。

 

普通に飛んできたな、おい。

 

…結局、

川沿いに何ヶ所かやってみて、先の方に行くとフッチーは見られなかった。

まぁ1回だけの調査なので絶対とは言えないものの、

あっちの方はいないそうだな~…ぐらいの結果は得られた。

 

市境を越えて更に行ったら、また見つかる場所もあるのかもしれない。

ただ、自分は地元市での調査(モドキ)のつもりなので、

市を越えてまでの調査は今のところ考えていない。

 

昆虫採集は、

「いる場所に行って採る」も楽しいのだが、

余裕があるなら「いるかどうかを調べる」など、

チャレンジしてみることもまた面白い。

 

チャレンジはボーズ(成果ゼロ)になることもあるが、

興味深い結果が得られることもあるし、

思わぬ良いポイントを見つけて想定以外の嬉しい成果に繋がることもある。

 

虫採りに興味がある方は、

ぜひこういう チャレンジ もしてみると、

もっと楽しくなると思う。