今回は、標本作りの便利道具の紹介です。
その名も 平均台。
「平均台」と聞いたら、おそらく九割以上の人が
“小学校の体育で使ったヤツ”
…を頭に思い浮かべるかと思いますが、
こと昆虫標本の世界においては全く違う物を指します。
写真の階段状の小さな台、これが平均台です。
無くても良いけど、あると標本が美しく整って見えるアイテムです。
良く見ると段ごとに小さな穴が空いており(最上段には2つ、2~4段目には1つずつ)、
この穴は下の土台につく所まで深く空いています。
つまり、段ごとに、標本の虫の高さやラベルの高さを揃えられるというワケです。
標本の高さというのは揃えなければいけないわけではありませんが、
揃っていると非常に全体が美しく見えます。
また、研究等で使用する場合は顕微鏡下で見るので
高さが揃っていた方が見やすいという事もあり、
多くの方が使用しています。
さて、その使い方ですが、
虫に刺した針を各段の穴に刺し込み、底に当たるまで押し込む。
…それだけ。
同じ深さの穴を使うことで、
標本を何個作っても
すべて同じ高さに揃えられるという仕組みです。
どの段で何の高さを揃えるかについては、
・最上段左:標本の背面で高さを揃える
・最上段右:台紙に貼る小型昆虫の高さを揃える
・2段目 :交尾器等の付属物を取り出した際に、台紙に貼って刺す
・3段目 :データラベル
・4段目 :種名ラベル・同定ラベル
…というのが一般的でしょうか。
2段目に交尾器等を刺さない場合は、その高さにデータラベルを刺す人もいます。
最上段左は、針の頭(尖っていない方)を下にして刺し込むため、
穴が少し大きくなっています。
※一瞬ゴキっぽくも見えますが、ゲンゴロウの一種です。
最上段右は、針の尖った方を下にして台紙の高さを揃えます。
(小さい虫を標本にする場合、直接針を刺さずに、台紙に貼りつけて、その台紙に針を刺します)
ラベルも高さが揃っていた方が整って見えますので、
3段目(データラベル)・4段目(一番下の段:種名ラベル)も利用します。
ラベルは標本と同じ向きに刺すのが基本ですが、
写真の台紙縦貼りのように標本が細く縦長になる場合は
90°右に回して縦に刺す場合もあります。
これは標本本体が縦長・ラベルが横長となり、
そのまま刺すと余計に場所を取ってしまうので、
どちらも縦長になるように揃えるためです。
多数の標本を一度に扱う研究者の人に多いですね。
…で、高さを揃えて標本をつくっていくと、並べた時にこんな感じになるワケです。
クロマルカブトの箱(左奥はルリクワガタ類…と、なぜかタカネトンボ)
今回ご紹介した写真は、志賀昆虫普及社製の「平均台 並型」です。
価格は800円ぐらいで、自分が購入したころよりだいぶ値上がりしましたね…
とは言え、持っていて損はないと思います。
また、「平均台 小型」という商品や、
他メーカーでも作っている所がありますので、
気になる方は色々調べて比較してみても良いかもしれません。
ちなみに私自身は今回紹介した志賀の「平均台 並型」を使っています。
…ただ、1つ難点を挙げるとすれば、
木製のため長年使用していると僅かずつ穴が掘れて深くなっていってしまい、
次第に高さが変わってきてしまうという事でしょうか。
まぁ高値い物ではなので1~2年に一度買い換えれば問題ないのですが、
個人的にはこれと全く同じ規格で
“金属製の平均台を誰か作ってくれないかなぁ…”
…なんて思ったりも。