この本はぼくにとって、いろんな意味で特別な本です。

 

初めて手にしたのは、小学校の3年か4年、母のプレゼントでした。
母は本さえ読んでいれば賢くなれると信じてた人で、とにかく読書を勧めました。

 

『2年間の休暇』と一緒にもらったのですが、母の感覚を疑いました。
薄っぺらで、絵本のようなイラストが付いていて、どう見ても子供向けでした。
ぼくはもう子供じゃないと、自分では思ってたわけです。

 

『2年間の休暇』(十五少年漂流記)のほうは、わくわくして面白かったです。
でも、『星の王子さま』は不思議な本でした。言葉は簡単、文章も読みやすいのに、
何が書いてあるのかさっぱりわからなくて、指の間からこぼれてゆきました。

 

そのままぼくの本棚で眠ってたこの本を、中学に入った頃に何気なく読んでみると
・・・むちゃくちゃに、泣ける本でした。
この本は、こんな本だったのか、という思いでした。

 

この本は、ぼくの読書コンプレックスを、忘れさせてくれる本でもありました。
ぼくは本を読むのが遅いので、どうしてもロシアの大作など読めませんでした。
でも、小学生のぼくに読めなかった本が、中学生のぼくに読めたわけです。
つまり、読書という体験は、読み手の「資質」が大きく影響するのです。
他人と比べられるものでもなかったのです。

 

読書に限らず、芸術作品とそれを鑑賞する人というのは、ソフトとハードであって、
組み合わせによって、どんな和音を響かせるか、決まるものなのでしょう。
そんなことをぼくに教えてくれた本でもありました。

 

最近読んで思ったのは、王子様の最後の数日の様子が、
新約聖書のイエスの最期に重なって見えたことです。
これは、普通のことなんでしょうか?

 

 

 

右は、持ち歩けるように、買ったものです。

訳者が違うものが話題になってましたが、ぼくは持ってません。

 

 



定価600円、というのは驚きです。