黒澤明監督の映画「乱」を鑑賞。
黒澤監督の映画は、モノクロ作品は素晴らしいのですが、カラーの作品の評価は、いまいちであるということ。
また、この「乱」は、興行収入としてもあまり振るわなかったということで、あまり、見る気にはなれなかった。
しかし、海外でのこの映画の評価は、非常に高く、ずっと、気にはなっていたもの。
それで、ようやく、鑑賞をしてみました。
やはり、さすが、黒澤監督という映画でした。
この、ハリウッド映画に、勝るとも劣らない、スケール感、躍動感は、黒澤監督でなければ出せないもの。
そして、物語も、なかなか、面白い。
そして、やはり、「日本的」な美的シーンが多くあり、そこが、外国人には、受けているということなのでしょう。
しかし、日本人には、それが、鼻につくところでもあり、評価が低いということになるのかも。
この映画「乱」は、毛利元就の「三本の矢」のエピソードを元に、シェークスピアの「リア王」をベースにして、物語が作られているそうですね。
舞台は、戦国時代と思われる時代。
主人公は、一文字秀虎という人物。
秀虎は、悪逆非道の限りを尽くしてのし上がり、周辺地域を支配した戦国武将ということになる。
この秀虎が、支配下にある藤巻氏、綾部氏の当主と、息子である太郎、次郎、三郎の三人と共に「巻き狩り」に出たところから物語は始まる。
その場で、居眠りをしてしまった秀虎は、悪夢を見て、家督を嫡男の太郎に譲ることを決める。
しかし、「それは、兄弟の対立を生み、家の存続に関わることになる」と三郎は、反対。
この三郎に同調して、反対を唱えた重臣の平山丹後と共に、秀虎は、二人を、その場で、追放処分にする。
藤巻の当主は、その三郎の気骨を気に入り、追放された三郎を追いかけ、自分の婿に迎えることにする。
さて、家督を継ぎ、一の城の城主になった太郎。秀虎は、太郎に城主の座を譲り、自分は、二の丸に住むことになる。
しかし、太郎は、「馬印が無ければ当主とはいえない」と、正室の楓の方に言われ、父、秀虎と対立をすることに。
父、秀虎を、完全に自分の支配下に置こうと行動を始めた太郎に、秀虎は、反発。
秀虎は、一の城を出て、次郎が城主をつとめる二の城に向かうことにする。
しかし、二の城に入ろうとした秀虎は、「家来たちの入城は認めない。父上、一人ならば、受け入れる」と次郎に言われ、事実上、城に入ることを拒否されてしまう。
次郎は、すでに、太郎の指示に従うことに決めていた。
秀虎は激怒し、二の城を去り、三郎が藤巻氏の元に去ったため、空き城になっていた三の城に入ることに。
しかし、この三の城に、太郎、次郎の軍勢が攻め寄せる。
そして、この城攻めの中で、太郎は、次郎の家臣によって撃たれ、殺害されてしまう。
次郎は、更に、城を攻め、三の城は、落城。
その有様を見た秀虎は、狂人となり、城を出て、野をさまようことになる。
夫である太郎が亡くなったことを知った楓の方は、次郎を籠絡し、その正室になろうとする。
次郎の重臣、鉄(くろがね)は、楓の方に籠絡されないよう、次郎に諫言を続けるが、次郎は、聞く耳を持たない。
そんな中で、藤巻氏の元に居る三郎から「父を引き取りたい」と次郎に申し出がある。
しかし、父を三郎に渡せば、三郎が、一文字家当主となる大義名分となり、自分の地位が奪われるのではないかと、申し出を拒否する。
三郎は、軍勢と共に、出陣。
藤巻氏も、それに加勢をし、次郎の軍勢と対峙することに。
そこに、綾部氏の軍勢も姿を現す。
「ここは、戦うべきではない」
と、次郎に諫言をする鉄だったが、次郎は、それを聞き入れない。
父、秀虎を探すために動いた三郎の軍勢を見て、次郎は、ついに、攻撃をかける。
しかし、綾部氏の軍勢が、それを見て、次郎の本拠地である一の城に攻めかかる。
急遽、城に戻った次郎だったが、時は、すでに遅く、城は、落城寸前。
そこで、楓の方が次郎を籠絡したのは、自分の一族を滅ぼした一文字氏に復讐をし、一文字氏を滅ぼすためだったということを知ることになる。
鉄は、楓の方を斬り捨てるが、城は、落城。
一文字氏は、滅びることになる。
そして、ようやく、父、秀虎を見つけ出した三郎は、秀虎と共に、戻る途中で、次郎の軍勢の残党に狙撃され、死亡。
三郎の死を見て、秀虎も、亡くなってしまう。
救いようのない、謀略と、殺し合い。
一代の栄華を築いたはずの一文字秀虎は、息子に家督を譲ったのを機に、全てを失ってしまった。
最後は、息子、三郎と、二人きりで話をすることが出来れば満足だと言ったが、そのささやかな願いも叶わず、二人とも死んでしまう。
まさに、神も仏もない、欲望の結果でしょう。
戦争は、何も、良いことがない。
しかし、人間は、なぜか、それを繰り返してしまう。
愚かなことです。