5月10日(日)、母の日に予定していた声楽発表会「歌の贈りもの」をコロナのために延期してあさって10月18日(日)に行う。

 当初予定していた5月は顔面神経麻痺の発症から3ヵ月で、人前で歌うことはもちろん、会の司会進行をするにもとても困難な状況だった。コロナの流行で活動のいろいろが休止になり社会全体が疲弊していたが、私は内心『助かった…』と思ってしまった。

 発表会は、せっかく歌のレッスンをしてきた生徒さんのことを考えて中止にはせず、コロナ流行の状況を見ながら、一応10月に延期ということにして、ホールを再予約したり準備をしてきて、いよいよあさってに開催する。

 

 今回の発表会には、知人のフルート奏者のMさんとヴァイオリン奏者のFさんが何曲か歌のオブリガートを演奏してくれることになっている。

 しかし、Mさんに頼んだ4曲のうち2曲を歌う予定だった方々が体調不良のため出演を見合わせることになってしまった。

 せっかくMさんにお願いしてあったので、省いてしまうのも申し訳なくその2曲は結局私が歌うことにした。こういう成り行きがなければ私は今回、マヒを理由に歌うことはあきらめ、歌わないつもりだった。

 

 5月の発表会を延期と決めた時、10月になれば発症から8ヵ月経つし、人前で歌えるコンディションまで回復できるだろうと安易に思っていた。しかし期待通りにはならず、未だに表情筋の動きは自由にならないし、病的共同運動という意志に反した厄介な動きまで出ている始末で、マスクを取って人前で歌うのはとても度胸が必要だ。

 当日歌えるかどうか不安ながらも毎日練習し準備はしてきた。

 

 2曲のうち1曲は「カッチーニのアヴェマリア」で歌詞は「アヴェマリア」と「アーメン」しかない。

オとウの口形は左の口角が中心に寄らずうまく丸くならない私にとって、これは好都合の曲だと思った。しかし、「マリア」のMAで上下唇を閉じる時、人中が右に寄り口が歪んで言いにくい。唇を閉じるマ行とバ行とパ行は会話でも動きが悪い。

 2曲目の「夢路より」は1番を日本語、次に英語で歌う。冒頭の「夢路より帰りて~」から始まりウとオの口形は出まくりで、英語の「Beautiful dreamer,wake unto me,~」なんて発音するのは困難極まりない。

 思い通りに作れない口形。左顔面にガムテープかなんかを貼られたかのように重くて、動きづらい頬や唇。口の動きと一緒に勝手に収縮運動する瞼。そして歌うとゴーゴーと聞こえる雑音。それでも頑張って歌うと顔と首と肩が酷く凝ってしまい、せいぜい2曲歌うのが限界だと思う。

 

 発表会のホールでは、コロナの感染防止のため、演奏者と聴衆の距離を3m~5m取って椅子を並べる予定でいる。なので近距離で顔を見られることがないのはちょっと救いだ。

 万全なコンディションではないが、いろいろ考えず音楽に集中して心を込めて歌おうと思う。