†お城の中のアリス†

気がついたらそこはお城の中の私の部屋だった
ベットに横になっていて酷く頭が重い
ハートの女王が傍の椅子から私を見下ろし
「随分うなされてたわねぇ。大丈夫かしら?」
そう聞いた
「覚えてないの…。何があったのか思い出せなくて……」
確か女王と庭でクローケーをしてたはずなのに
思い出そうとすると激しい頭痛が私を襲う
「無理に思い出さなくていいんだよ、アリス。今はまだその時じゃないしね」
そう言ってにししっと嗤うのはチェシャ猫だ
神出鬼没な彼女は女王の座る
椅子の背凭れに座っている
「時が来れば嫌でも思い出せるよ。それよりも今はお客だ」
チェシャ猫は妖しく微笑み扉を指差す
次の瞬間扉をノックする音と
廊下をドタドタと走る音がして小さな悲鳴と共に
勢い良く扉が開けられる
「アリスおねぇちゃん!!大丈夫~~!?」
小さい女の子が心配そうに言いながら走ってくる
立て続けにアリス、アリスと四人が入ってきた
「あぁっ牡蠣ちゃんごめんね。もう大丈夫だよ」
私は起き上がり抱き着いてきた
牡蠣ちゃんを優しく抱き締める
「アリス……無理しないで?」と
心配そうにおずおず駆け寄ってきたのは白兎だ
「心配してくれてありがとう白兎ちゃん。牡蠣ちゃんもね、ありがとう。三月兎といかれ帽子屋も」
後ろから歩いてきた三月兎と
やれやれといった感じで扉を閉めてくるいかれ帽子屋
おそらく最初に来たのは白兎と帽子屋と三月兎で
後から牡蠣ちゃんが来たのだろう
「本当に大丈夫でしょうか?お顔の色が優れないようですし……美味しい紅茶はいかがですか?」
三月兎が心配そうにしながらも優しく微笑む
「こいつはハーブティーだろう?」と
帽子屋はどこからか取り出した
ティーセットを三月兎に渡しお茶を注ぐ
「あっこの香りはローズヒップ♪酸味が効いててスッキリするから大好き♪」
三月兎からカップを受け取り一口飲んだ
酸味で幾分か頭の重みが楽になった気がする
「とっても美味しい♪ありがとう」
微笑みながら私がそういうとハートの王が入ってきた
「アリス、もう身体が大丈夫ならお茶会を始めましょう。何でもない日のパーティーよ」
と話しかける
王といっても女性だ
「それは良いわね。白兎みんなを呼んできて頂戴」
女王に言われて白兎は頷き扉を開けようとする
その後ろ姿にチェシャ猫が
「ダイナは今いないから探さなくていいよぉ」と言う
それに頷いて白兎は部屋を出ていく
「じゃ私も着替えなくちゃ」
飲み干したティーカップを
差し出した三月兎の手に預け
ベットから少しふらつきながら私は立ち上がる
「焦らなくていいからゆっくり準備なさい。他の者はアタシについておいで!。お茶会の準備をするわよ!」
女王はそう言ってみんなを引き連れていこうとする
「そんじゃあちしは先にいってるよぉ」
声だけを残しチェシャ猫がいつの間にか消えていた
すると三月兎がはっとして
「あらっ眠り鼠さんを起こしてこなければ。白兎さんわかるでしょうか?ちょっと見てきますわ」
そう言って女王より先に扉を出て白兎を追いかける
「今更な気もするが……追い付ける訳無いだろうに」
と私を気にしながらも呆れたように
帽子屋が扉を出ていく
三月兎は同じ兎でものんびりしている性格だ
変わって白兎はいつも走り回っている
一言で言えば走る早さが違うのだ
「まぁまぁ、あの子のことを言うのも今更じゃない」
そう言って牡蠣ちゃんを連れて王が後に続いた
そんな会話を聞きながらベットを整えた私は
衣装ケースを開ける
いつものシンプルなエプロンワンピースに着替えて
みんなの後を追う
ふと自分の影がないことに気づく
何処かに出掛けているのだろうか?
まぁ白兎が探してくれるはずだと思い
静かになった部屋を後にする


(挿絵/Ant-Me)