ごめんね、嘘だけど 後編  | 恋愛前夜

恋愛前夜

はじめまして。
ここは、私が大好きな漫画から想像した小説を中心に載せているブログです。
作者さま、出版社さま、その他関係者さまとは一切関係ありません。
好きが深まって、個人的に小説を書いています。
心の広い方、二次小説に理解のある方のみお読み下さい。

枯渇した口内から発せられた俺の声は、掠れてしまった。

やっと聞いた俺に、キョーコは嬉しそうに内緒話をするように耳元に唇を寄せてくる。
耳に掛かる吐息に体が自然と熱くなり、ズクンと下半身に熱が灯りそうになった。

キョーコはあの時、どんな風に乱れるんだろう。
どんな表情で受け入れて。
どんな瞳で俺を見て。
どんな声で啼くんだろう。

誰に教えられたのか考えると腸が煮え繰り返る程の怒りを感じる。
同時に自然とキョーコの裸を想像してしまう。

「あのね…」
(マズイマズイマズイ)

「赤ちゃんってね」
(ああ…神様)

「キスするとできるんだって」
(教えた奴出てこい!殺)


俺は、ズルズルと椅子から滑り落ちるようにカーペットの上に落ちる。

「私も全然知らなくて…だから気にすることないよ蓮兄」

何とも言えない脱力感が俺を襲う。
崩れるように座り込んだ俺にキョーコも一緒に座り、勘違いしたまま慰めの言葉をくれる。


「そ う……なんだ…知らなかったな」
(そうなら、キスが挨拶の国は今頃大変なことになってるよキョーコ)


「教えてくれてありがとうキョーコ」

知らなかった事を落ち込んでいると思っているキョーコを安心させるように微笑むと
「どういたしまして」
えへへとはにかむようにキョーコの笑顔が返ってきた。


キョーコが本当の事を知らなかったことにほっとする。

相変わらずピュアで乙女なキョーコ。


けど、それ嘘だから。

そう思ったが、俺はまだ真実をキョーコに教える気はない。

キョーコはまだ知らなくていい。

物心つく幼い頃から、今までずっと大切にしてきたんだ。
キョーコが成長していく様をこれからも、俺が1番傍で見守る。

小さな頃から、料理はキョーコが作ってくれて、勉強は俺が教えていた。
教えるのは俺。

だから今更その関係を誰かに譲る気はない。
勿論男と女の関係も。



「明日、ショーちゃんにも教えてあげなくちゃ」
「キョーコ…?」

教えて満足したのかキョーコは俺から離れるように立ち上がろうとし、俺にとって物騒な言葉を発する。
思わず力いっぱいその腕を取った。

「誰に…教えるって…?」

「え?ショーちゃんだよお向かいの」

(前言撤回。今すぐ本当の意味を教えても良いですか?)


「本当か試してみようか?」

「蓮…にぃ?」

「・・・キス」

ごめんね、嘘だけど…俺はそれを利用する。