The Basketweave Elegies (Vibraphone) | チーフ・エディターのブログ

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音楽配信の仕事上年間クラシック中心に毎年1,200枚ハイレゾの新譜を聴く中で気になったものを1日1枚。

William Winant (Cold Blue Music) 96Khz/24bit

これはとても幻想的なソロ・ヴィブラフォンによる9楽章の現代音楽。速弾きや曲芸的なテクニックを見せつけるということもなく無く、ゆっくりとしたシンプルな旋律でヴィブラフォン響かせ、スピーカーで聴くと部屋の中がヴィブラフォンのゆらゆら揺れる芳醇な音色でいっぱいになる。

 

アメリカの現代作曲家Peter Garlandはバスケット(籠)が大好きでコレクターでもある。彼の籠、籠職人に対する憧れというものは、それが伝統的な人々の暮らし、季節に根ざして調和しているからだという。大体において本当の籠作りは辺鄙な場所で営まれておりそこでの生活はスローペースで、せわしない都市に生きる芸術家とのものとは違う。そのようなアートと籠づくりのようなクラフトワークとは何が違うのだろう? そこには違いがあるはずで、その接点をいつも探しているのだと言う。常々、籠のようによく出来ていて、美しく、実用的で、頑丈な作品を書きたいと思っているそうだ。

 

アートとクラフトワークとの違いなんて考えたこともなかったが、言われてみるとバスケットというものは規則性のある編み方で、よく見てみるとそれが織りなす模様は芸術的で美しい。でも、芸術作品にしようと思ってやっているわけではない。

 

このアルバムで展開されている曲目も、単純化された音楽の構造、強烈な協和音、ミニマルという彼のこれまでの作曲スタイルに沿ったものになっている。籠の紋様もそう言えば、まるで同じような旋律が徐々に変化していくミニマル音楽のようだ。

 

このような作品を演奏しているのはパーカッショニストの、William Winantでグラミー賞にもノミネートされた現代音楽パーカッショニストとしての第一人者。作曲家のGarlandとは50年以上の付き合いになるそうでこの作品の解釈としてはこれ以上のプレイヤーはいないだろう。

 

2023-251

 

 

 

 

 

via Classic Music Diary
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