Mikael Ayrapetyan (Grand Piano) 96Khz/24bit
1862年、当時のトルコ帝国に生まれたアルメニア人ステファン・エルマス。ドビュッシーと同い年。幼い頃から神童の誉高く13歳でリスト全作品のリサイタルを行い、そのリストにも認められて長く交流を持った。ピアニストとして大成して当時の欧州では大成功を納めたと言っていい。
ただ、良いことばかりが続かないのは今も昔も世の常で40代後半からベートーヴェンのように聴覚に異常をきたし始め、またショッキングな出来事も重なり自閉症気味になり外の世界との接触を断ってしまうのだが。。
その困難なとき彼を励まし支えたのが、かの有名な両腕のない画家エイメ・ラパン。ラパンは生まれた時からそのハンデキャップを持っていたのだが強い意志と生来の楽観的な性格でそれをものともせず足で筆を持って描くことで絵画の道を極めた。彼女の描く独特のタッチのポートレイトは有名人がこぞって依頼する程の大変な人気だった。勿論エルメスの肖像画も何点か描いており、とても慈愛に満ち溢れているいい絵なのでアルバムジャケットに使えば良かったのに。
出会ったときエルマス49歳ラパン43歳。正式な結婚はしなかったもののエルマスが亡くなるまで連れ添った。
エルマスは作曲もよくこなしピアノ曲を中心に少なからず作品を残した。作風は全くのロマン派そのものでとても聴きやすいサロン風音楽がこのアルバムでは収められている。今回は世界初録音ということだが今後は協奏曲も録音されるのだろうか、どんな曲なのか興味を惹かれる。
2022-1260