半年ほど前に職場の送別会に参加した。
同月に二人退社する予定だったので、まとめて一回だけ行うとのことだった。
退社するのは二人とも女性だった。
ボクはまだ入社してから日が浅かったこともあり、その二人とはほとんど交流もなかったし、会話も数える程しかしたことはなかった。
それでも何とな~く、どちらもあんまり好きじゃなかった。
それは異性としてではなく、人間としてだ。
あ、言い忘れていたがボクはすごく偏見に満ちた考え方をする人間だ。
だからか何とな~く、こいつらクソ面白くもねぇし、嫌いだなぁ~みたいに思っていた(さっきより露骨になった)。

でもだからと言って、どちらも似たタイプの人だったかというと、そうではない。
寧ろ逆だ。
すごく対照的な二人だった。
Aさんはすごく明るくて、人当たりも良く、男女問わず人気があって活き活きと仕事をしているタイプだったが、それに比べてBさんは一人で黙々とストイックに仕事をするタイプで、同僚とのコミュニケーションも少ない人だった。

そんな二人のあまりにも対照的な性格がこの送別会で浮き彫りになったので、すごく印象に残った。


この送別会は結構ラフなスタイルで、小さいバーのような場所を貸し切って行われた。
集合時間もそれぞれバラバラで、勝手に来て勝手に帰っていくみたいな感じだった。
居たい人間だけ朝まで居て、残った人間でまぁテキトーに二件目行くならどっか行くか、みたいな。

一応、送別会自体は20時ぐらいからスタートしていたようだが、ボクが落ち合ったのは23時ぐらいだった。
ボクが着いた頃にはもうすでに帰った人もいたようで、所謂中だるみ状態に突入しており、そんなに場は盛り上がってはいなかった。
でもまぁ各々楽しんではいるようで、ターンテーブルでDJをしている人もいたり、その音楽に合わせて踊ってる人もいたり、寝ている人もいたりした。
んでボクもDJさせてもらったり何やかんやしてると深夜1時ぐらいになっていた。
ひとしきり終えた気分になり、ソファーで休んでいると横のソファーにAさんが座った。

「今日は来てくれてありがとう。しんどかったら全然寝てくれていいから」
「いえいえ、まだ大丈夫っすよ。一応朝まではいますんで、帰ってから寝ますわ~」
なんていうクソ程も面白くない会話を続けているとAさんが
「それにしても悔しいわ~。M君だけ見送り出来へんかったし。あたしが知らんうちに帰ってたからな~。〇〇君(←ボクの本名)は帰る時は絶対一声掛けてな。見送りしたいから」
と言う。

何と出来た人間でしょうか。
来てくれた人間の一人一人にキチンと挨拶して回る気配りを忘れず、尚且つ帰る際の見送りまで一人一人に対して懇切丁寧に行う。
お前はキャバ嬢か。
それに引き換えBさんなんて今日一言も会話も交わしてねぇよと思いながらBさんの方をチラッと見たら、自分の為に用意された食いかけのケーキの前で突っ伏して寝てやんの。
すげぇ対照的だなぁと思った。

その後、朝になってボクが帰る時、Aさんは声を掛けなかったにも関わらず、勿論ちゃんと気付いて見送ってくれた。
「これからも仕事頑張ってね」の一言を添えて。
帰る前Bさんの方をまたチラッと見たら、痴呆のババアみたいな顔で、明後日の方向を向いてコーヒー啜ってたわ。


ここまでの流れではボクはAさんに対して好印象だったように思うだろう。
全然違う、逆だ。
ボクはそういうことをサラッと出来る人間を信用できないし、胡散臭いと思ってしまう。
心にもないことをスラスラと喋くりやがってバカが、テメー見下してやがんのか?みたいな気分にすらなる。

礼儀としてやっているんだから別に深く考えることではないのも分かっている。
でもボクは経験上、そういうことに対して不器用な人間の方が面白い奴が多かったし、信頼も出来た。

だっていくら礼儀か何か知らねーけど嘘じゃん。
嘘をベラベラと言ってるだけじゃん。
あとそういう形式を大事にしてる感じがヤダ。
そこに私情は介入しないのか、と思ってしまう。
嫌いな奴にも好きな奴にも一様に形式通り振る舞うのか。
バカかお前は。
こんなことを言っちゃうと、「"形式通りにしたい"という私情が介入してる」なんてことを言う輩がいそうだが、食い気味で、うるっせぇ黙れ!と言ってやる。
誰が作ったのかも分からんような形式の通りにしたいと思うこと自体がバカでしょ。
第一、何故その形式が正しいのか考えたことがあるのか?
そんなことも考えずに、これをしときゃ間違いないって感じでやってんじゃねぇよ!
あと、もし万が一、Aさんが本っ当に心から皆様に感謝しているからさせていただいておりますという性格だったとしたら(違うけど)、それはそれでピュアすぎて気持ち悪いわ。
別にみんなお前を送り出す気持ちで来てねぇよ、ただ単に酒飲みに来ただけだよ、と思う。


こうして文字に起こしてみると、ボクってなかなか器が小っちゃいし、最低な感じがするね。
書いてるうちに興が乗ってきて、かなりエスカレートしちゃった。
まぁでも半分は本当です。
ボクは器用にこなすAさんより、不器用なBさんの方に親近感を覚える。

何かBさんはテレビでよく見る頑固なラーメン屋の店主みたいな感じなんですよ。
スープから先に飲めとか、麺とスープ一緒に食わなきゃ出て行ってもらいます的な。
あれってテレビで見る分には拘っててカッコいいなって思うけど、自分がそれを要求されると鬱陶しい感じがする。

それに比べてAさんは何の拘りもないラーメン屋みたい。
マヨネーズ持ち込み可、お客様の好きなようにしてくださ~い的なね。
そんなラーメン屋行きたくねーもんなぁ。
だったらやっぱBさんだわ。
端から見てる分にはね。


まぁでもこの送別会でBさんに好印象を持ったのは確かだなぁ。
何かそんな人って面白いなぁって思うもん、ボクは。
まぁBさん、すっげぇブスだったけどね。