浜田省吾の1986年発表の名盤『J.BOY』に収録されている「想い出のファイヤー・ストーム」という曲がある。
あるイケてる大学生のカップルが卒業後結婚し、やがて喧嘩ばかりになり、昔、二人で浜辺で囲んだファイヤー・ストーム(焚き火)の想い出なんかを振り返り、もうあの頃のようには戻れないんだね、でも悲しむことなどないのさ…的な曲である。
この曲を聴いていて、ボクはある出来事を思い出した。
これから記す話は目黒ガソリン版「想い出のファイヤー・ストーム」である。
小学3年の時のクラスメイトにK君という、所謂ちょっぴりヤンキーの男の子がいた。
K君はスポーツ万能で男前だったので女子にモテたし、硬派なところもあったので男子からの信頼も熱かった。
ところが、ある昼下がりの授業中、学校の近くで火災があり、消防車のサイレンの音が教室の中まで聞こえてきた。
かなり長い間サイレンの大きな音が響いていたので、学校からごく近い距離で火災が起こったのは見当がついたし、教室の窓から煙が上がっている場所が少しではあるが確認も出来たので、おおよその位置も把握出来た。
もうこうなってしまうと教室内は授業そっちのけで、教師の制止も虚しく、ギャーギャーとやかましい生徒達の動物園状態になる。
文字通り火が付いたように狂喜する生徒達の中に件のK君の姿もあった。
K君は確かに普段から調子に乗りやすい性格ではあったが、その日は一段とその性格が爆発していた(火だけにね)。
ボクも狂喜の渦中でギャーギャー言っていた一人ではあったのだが、そのK君の度を超えたはしゃぎっぷりを何故か冷静に見ていたのを覚えている。
K君っていつもそんなに騒いでたっけなぁ、なんてことを考えていたら、ふと燃えたのってK君の家じゃねぇのか?という変な予感めいたものが脳裏をよぎった。
しかし勿論そんなことを口に出すはずもなく、また元の狂喜の渦の中に身を任せた。
やがて事態も沈静化し、授業が再開された。
するとまもなくしてボクらの教室に教頭が脂汗を浮かべながら走ってきた。
そしてなんとK君を手招きでちょっとと呼ぶのだ。
その瞬間、ボクはさっきの自分の予感が的中したのを悟った。
何?って感じの呆気に取られた表情で教室を出て行ったきり、K君がその日教室に戻って来ることはなかった。
なんでも後で聞いた話によると、親御さんが揚げ物を料理している間に電話が鳴り、少し目を離した隙に起こった事故らしい。
今思えばK君のあのイカれたはしゃぎっぷりは、後に訪れる惨劇の前の最後の打ち上げ花火(火だけにねPart2)のように感じられて仕方がなかった。
虫の知らせとは少し違うが、何か見えないところで念のようなものが働いているとしか思えない不思議な体験だった。
その事件がきっかけでK君は程無くして転校した。
親御さんが隣町だかどこかに新たにマンションを借りたらしい。
そして数年後、ボクは中学1年になり、すっかりそんなことも忘れていた夏休みのある日のこと。
ボクは当時、塾に通っており、同級生でヤンキーの親分的存在だったN君(このN君の話も今後書く予定でいる)も同じ塾に通っていた。
N君は小学校時代からの幼馴染みで、すごく優しい子だったので、ボクがヤンキーとは全く無縁の人生を歩んでいようが、そんなことは全然関係なく、それなりに仲良くしてくれた。
そんなN君といつものように授業が終わり、下駄箱で靴を履き替えていると、急にN君が
「Kって覚えてる?あいつ今、外で待ってんねん。今から俺ら一緒に遊びに行くねん」
と言った。
ヤンキーのネットワークとはすごいもので、ケータイの普及もままならない時代でありながら、N君はどのタイミングで、どこでか知らんが、K君と連絡を取り合っていたのだ。
ボクはへぇ~と言い、会うのなんて何年振りだろと思いながら塾を出た。
すると塾の外にはN君の言っていた通りK君が立っていた。
外はもう暗かったが、K君の髪が金色になっているのが分かった。
ボクの中学当時は夏休みとはいえ、なかなかそこまで明るい色に髪を染める子は珍しかったので、一目見てすぐにヤンキー街道まっしぐらであることが見てとれた。
あぁ~、やっぱそうなっちゃうのねぇ~と感慨に耽りながらも、久し振りっと軽く挨拶を交わした。
それから三人で他愛もないことを少し喋ってから塾を後にした。
帰る道すがらK君がおもむろにポッケをまさぐり、あろうことかタバコを取り出した。
「アンタ火で痛い目見てんのに、そんな早くから喫っちゃうの?」と思っていたのも束の間、気持ち良さげに"どや顔"でスパスパ喫い始めた。
コイツどうしようもねぇなぁ~と思いつつも、まぁヤンキーはタバコ喫わなきゃ始まんねぇもんな、と妙な納得もしていた。
しかしその後、タバコの話題が弾み、テンションが上がったK君は何を思ったのか、自分の腕にジッポのオイルを垂らし、そこにライターで火を付け、"昇龍拳"だか何だか格闘ゲームの技の名称を叫びながら、腕を振り回して火を消すという奇行を何度も繰り返した。
「えぇ~!お前マジか?ナンボほど頭悪いねん!」と思ったが、K君はそんなボクの気持ちを余所に、すごく楽しげに青春を謳歌していたのだった…。
ボクは今でも目を閉じれば、あのファイヤー・ストームを鮮明に想い出すことができる。
K君の腕の周りを刹那に囲い、燃え盛っては消えていった嵐のような炎を。
あるイケてる大学生のカップルが卒業後結婚し、やがて喧嘩ばかりになり、昔、二人で浜辺で囲んだファイヤー・ストーム(焚き火)の想い出なんかを振り返り、もうあの頃のようには戻れないんだね、でも悲しむことなどないのさ…的な曲である。
この曲を聴いていて、ボクはある出来事を思い出した。
これから記す話は目黒ガソリン版「想い出のファイヤー・ストーム」である。
小学3年の時のクラスメイトにK君という、所謂ちょっぴりヤンキーの男の子がいた。
K君はスポーツ万能で男前だったので女子にモテたし、硬派なところもあったので男子からの信頼も熱かった。
ところが、ある昼下がりの授業中、学校の近くで火災があり、消防車のサイレンの音が教室の中まで聞こえてきた。
かなり長い間サイレンの大きな音が響いていたので、学校からごく近い距離で火災が起こったのは見当がついたし、教室の窓から煙が上がっている場所が少しではあるが確認も出来たので、おおよその位置も把握出来た。
もうこうなってしまうと教室内は授業そっちのけで、教師の制止も虚しく、ギャーギャーとやかましい生徒達の動物園状態になる。
文字通り火が付いたように狂喜する生徒達の中に件のK君の姿もあった。
K君は確かに普段から調子に乗りやすい性格ではあったが、その日は一段とその性格が爆発していた(火だけにね)。
ボクも狂喜の渦中でギャーギャー言っていた一人ではあったのだが、そのK君の度を超えたはしゃぎっぷりを何故か冷静に見ていたのを覚えている。
K君っていつもそんなに騒いでたっけなぁ、なんてことを考えていたら、ふと燃えたのってK君の家じゃねぇのか?という変な予感めいたものが脳裏をよぎった。
しかし勿論そんなことを口に出すはずもなく、また元の狂喜の渦の中に身を任せた。
やがて事態も沈静化し、授業が再開された。
するとまもなくしてボクらの教室に教頭が脂汗を浮かべながら走ってきた。
そしてなんとK君を手招きでちょっとと呼ぶのだ。
その瞬間、ボクはさっきの自分の予感が的中したのを悟った。
何?って感じの呆気に取られた表情で教室を出て行ったきり、K君がその日教室に戻って来ることはなかった。
なんでも後で聞いた話によると、親御さんが揚げ物を料理している間に電話が鳴り、少し目を離した隙に起こった事故らしい。
今思えばK君のあのイカれたはしゃぎっぷりは、後に訪れる惨劇の前の最後の打ち上げ花火(火だけにねPart2)のように感じられて仕方がなかった。
虫の知らせとは少し違うが、何か見えないところで念のようなものが働いているとしか思えない不思議な体験だった。
その事件がきっかけでK君は程無くして転校した。
親御さんが隣町だかどこかに新たにマンションを借りたらしい。
そして数年後、ボクは中学1年になり、すっかりそんなことも忘れていた夏休みのある日のこと。
ボクは当時、塾に通っており、同級生でヤンキーの親分的存在だったN君(このN君の話も今後書く予定でいる)も同じ塾に通っていた。
N君は小学校時代からの幼馴染みで、すごく優しい子だったので、ボクがヤンキーとは全く無縁の人生を歩んでいようが、そんなことは全然関係なく、それなりに仲良くしてくれた。
そんなN君といつものように授業が終わり、下駄箱で靴を履き替えていると、急にN君が
「Kって覚えてる?あいつ今、外で待ってんねん。今から俺ら一緒に遊びに行くねん」
と言った。
ヤンキーのネットワークとはすごいもので、ケータイの普及もままならない時代でありながら、N君はどのタイミングで、どこでか知らんが、K君と連絡を取り合っていたのだ。
ボクはへぇ~と言い、会うのなんて何年振りだろと思いながら塾を出た。
すると塾の外にはN君の言っていた通りK君が立っていた。
外はもう暗かったが、K君の髪が金色になっているのが分かった。
ボクの中学当時は夏休みとはいえ、なかなかそこまで明るい色に髪を染める子は珍しかったので、一目見てすぐにヤンキー街道まっしぐらであることが見てとれた。
あぁ~、やっぱそうなっちゃうのねぇ~と感慨に耽りながらも、久し振りっと軽く挨拶を交わした。
それから三人で他愛もないことを少し喋ってから塾を後にした。
帰る道すがらK君がおもむろにポッケをまさぐり、あろうことかタバコを取り出した。
「アンタ火で痛い目見てんのに、そんな早くから喫っちゃうの?」と思っていたのも束の間、気持ち良さげに"どや顔"でスパスパ喫い始めた。
コイツどうしようもねぇなぁ~と思いつつも、まぁヤンキーはタバコ喫わなきゃ始まんねぇもんな、と妙な納得もしていた。
しかしその後、タバコの話題が弾み、テンションが上がったK君は何を思ったのか、自分の腕にジッポのオイルを垂らし、そこにライターで火を付け、"昇龍拳"だか何だか格闘ゲームの技の名称を叫びながら、腕を振り回して火を消すという奇行を何度も繰り返した。
「えぇ~!お前マジか?ナンボほど頭悪いねん!」と思ったが、K君はそんなボクの気持ちを余所に、すごく楽しげに青春を謳歌していたのだった…。
ボクは今でも目を閉じれば、あのファイヤー・ストームを鮮明に想い出すことができる。
K君の腕の周りを刹那に囲い、燃え盛っては消えていった嵐のような炎を。