2026.4 NO.242 キムテヒ VS キムテリ
映画の日本アカデミー賞が今週(3/13)、本家の米アカデミー賞が来週(3/16;日本時間)発表される。今回は昨年初めから観て記憶に残った映画やドラマについて語りたい。
邦画ではまず『国宝』。本ブログ前々号235号(ろうかいVSろうがい)で触れ、「2026年度日本アカデミー賞においては、誰に聞いても一番手に『国宝』を挙げるのではないか。最優秀主演男優賞は吉沢亮氏で最優秀助演男優賞は横浜流星氏(前年度『正体』にて最優秀主演男優賞受賞)で決まりと思う人も多いのではないか。」と書いた。
日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞において本命の吉沢氏の対抗馬となるのは映画『でっちあげ』の主役綾野剛氏だろうと思った。暴力教師と訴えられた人物像と真実の人物像を上手く演じ分けされていた(綾野氏は映画『愚か者の身分』にて北村匠海氏、林裕太氏ともに釜山国際映画祭で最優秀俳優賞を受賞している)。しかし、残念ながら、優秀主演男優賞に選ばれなかった。
本映画は週刊誌での評価が高かったので観ることにした。だが、日頃からニュース等でモンスターペアレンツや教育委員会のことを苦々しく思っているに加え、好感度が高い柴咲コウさん、亀梨和也氏、光石研氏たちが敵役を演じており、不快感、違和感から映画に没入できなかった。途中退出しようかとまで考えた。それでも後半に入りファンである小林薫氏扮する弁護士と木村文乃さん演じる主人公の妻が奮闘しハッピーエンドで映画が終わったので、救われた気になった。
終戦記念日の前には『長崎 閃光の影で』を観た。原爆投下直後の看護学生の奮闘ぶり、無力感から心の傷を負う姿が描かれている。
原爆のむごたらしさは映画で表現するには限界がある。原爆でなくとも、戦争になれば、殺すか殺されるか異常な精神状態の中で国際法違反と言っても意味がない。多くの民間人も犠牲となる。
哲学者サルトルは「金持ちが戦争を起こし、貧乏人が死ぬ」との至言を宣った。先月国会の代表者質問にて、れいわ新選組の奥田芙美代共同代表が「本当に戦争に巻き込まれた時、最前線に行くのは誰なんですか? 高市総理率いる自民党なんですか?」と問うた。国会での発言としては不穏当であれ、上記サルトルの至言と趣旨は同じだ。
我ら貧乏人たちよ、とくに若者たちよ、身の貧しさは恥じる必要はない。米国・イスラエル連合軍とイランとの戦争やウクライナでの惨状(ウクライナの住民は一発のミサイルよりも多数の戦闘用ドローンが恐怖という)を見ても、戦争になれば自身や家族がどうなるかの想像力が欠如し、一部の政治家の言に踊らされるのなら、その愚かさを恥じるべきだ。
『経済とイデオロギーが引き起こす戦争』(夕日書房)の著者岩田規久男氏は「情報弱者で社会に不満を持っている人ほど、政府に誘導されているという意識なしに誘導されていくことを歴史は示している。」という。
戦争は、最終かつ最悪の「外交」手段。「戦争反対」は、思想や信条とは関係のない、人類にとっての至上命題なのだ。
“野球のご意見番”張本勲氏が、原爆被害者として60余年の沈黙を破り、被爆体験、反戦を語り始めている。
戦後の沖縄を舞台にした『宝島』については、賛否があるが、同じ長時間の『国宝』と比較して論じるべき映画ではない。悲惨な沖縄地上戦の生々しい記憶が残る戦後の初期において米国の施政権下に置かれ見捨てられたという思いと地位協定に基づく米軍の理不尽な言動に憤怒と絶望感に苦しむ姿を知ることは当時の沖縄を知らない我々世代が沖縄県民の精神性を理解する上で観るべき価値があると思う。
熱演していた主要キャストの、妻夫木聡氏、永山瑛太氏、窪田正孝氏、紅一点の広瀬すずさんの内、妻夫木氏と広瀬さんが日本アカデミー賞の優秀男女主演賞に名を連ねた。
師走に入って、『ナイトフラワー』を観た。第50回報知映画賞にて北川景子さんが主演女優賞、森田望智さんが助演女優賞を受賞している。お嬢様役やキャリアウーマンを演ずることが多い北川さんが映画の冒頭からダミ声でシャウトしているのを見て驚いた。貧困に喘ぐシングルマザーが薬の密売人に転落する役を見事に演じ、新境地を開いたと思う。
北川(進)先生がノーベル賞に輝き、女優北川さんは日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に選ばれるか。
それ以上に、女格闘家役の森田さんに驚かされた。恥ずかしながら、森田さんを知らず、格闘家出身の女優がいるのかと思った。7キロ増量しガニ股で歩く後ろ姿は男そっくり。
映画館から戻り、すぐ調べたら、『全裸監督』に出演していた。映画は観ていないが、伝説のセクシー女優故黒木香役なら、妖艶であろう。格闘家とは違い過ぎる。彼女が憑依女優とか呼ばれるのはむべなるかな。日本アカデミー賞最優秀助演女優賞は彼女しかいないのでは。その結果は3日後に。
洋画では、2025年アカデミー賞受賞作やノミネート作品を観た。3月に観たのは作品賞、主演女優賞、脚本賞等5冠に輝いた『ANORA アノーラ』。主演の若手マイキー・マディソンさんが主演女優賞を受賞したのはまだ理解ができる。裸一貫、文字通り体当たりの演技で主演女優賞を受賞をした女優は過去にも少なくない。
しかし、作品賞、脚本賞はないだろう。富豪家の御曹司と娼婦の恋愛の行く末が悲劇に終わる。そんな身分違いによる破局話は陳腐と言っても過言ではないだろう。
対抗馬であった『サブスタンス』の方は第77回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞を受賞しているのに。今回に限らず作品賞の選考基準が私には理解できない。
主演のデミ・ムーアさんは前哨戦の第82回ゴールデン・グローブ賞でムーアさんが主演女優賞を獲得している。
同じ裸になるにしても、アンダーヘアまで晒し、しかも還暦を超えたムーアさんが共演の20代後半のマーガレット・クアリーさんと裸体を並べる。有名女優がどれぐらいの覚悟がいるのか私の理解を超えている。
興行には役に立つが演技では認められない女優を「ポップコーン女優(Popcorn Actress)」と揶揄されるが、そのありがたくない呼び名を払拭させるムーアさんの意気込みをみれば、主演女優賞を彼女にあげて欲しかった。ただ、『哀れなるものたち』で主演し清純派ながらアンダーヘアまで見せたエマ・ストーンさんが前年度主演女優賞を受賞しているので、それと被ることが禍したか。
前評判が高かった映画『教皇選挙』も3月によく通う錦糸町では上映がなく西新井のTOHOで観た。その1カ月後にフランシスコ教皇が逝去した。某政治家と違い間違っても「都合よく」とは言わない。思っていた以上に病状は重かったのかと思った。
コンクラーベはベール包まれており、我は、教皇選挙で新教皇が決まらないと煙突から黒い煙が、決まると白い煙が上がることぐらいしか知らない。選挙の具体的段取りが観られて興味深かった。
私自身キリスト教に限らず宗教に対する関心は低い。ただ教皇選挙のコンクラーベには以前から興味を持っていた。本ブログ2015年8月号(NO.50 (コンクラーベとコンクラベ」)にて「1978年のコンクラーベも時間がかかり、3回目にヨハネ・パウロ1世が選出された。それはある勢力にとって最も都合の悪い教皇が誕生したことも意味した。カトリックに縁のない私でも好々爺的な感じのよい教皇だと思ったが、たった在位33日で逝去した。バチカン銀行の不透明な財政を改革するため人事の刷新が発表される直前亡くなったため、暗殺説が根強い。私も暗殺されたとみている。」と書いた(10年経った今はその発言をちょっと軽率だったかと思っている)。
我々は映画のごとく暗闘があるように思いがちではあるが、今回参加した日本人の枢機卿に寄れば、コンクラーベは4回目で決まったが、3回目で流れができていたと話す。
逝去した前教皇は改革派で保守派からの反発もあり、対立を避けるため中道的な新教皇に白羽の矢が当てられたと見られている。
韓流映画では昨年5月にWOWOWが韓流映画「韓国の民主化」の特集を組んでいた。まだ観ていなかった2作品を視聴した。1つは、独裁軍事政権が倒れ民主化が期待されたが、軍の中で全斗煥率いる反乱軍が鎮圧軍のと戦いに勝利しクーデターが成功したため、ソウルの春は桜のごとく早く散ることになる『ソウルの春』(2023年公開)。
全斗煥に扮するのは演技派トップスターのファン・ジョンミン氏。頭を丸めて怪演していた。ちなみに、ファン氏が主人公を演じる『国際市場で逢いましょう』(2014年公開) が韓流映画における私の一推し。朝鮮戦争を舞台に生き別れた父の言いつけを守り、長男として家族の為にひとり苦難の人生を歩む。サブタイトルをつけるとしたら「長男はつらいよ!」になるか。
もう一つの今回観た作品は、全斗煥軍部独裁政権が大統領直接選挙への改憲を求める民衆を弾圧した『1987、ある闘いの真実』 (2017年公開)。ヒロインはキム・テリさん。本作を観て初めて『お嬢さん』(2017年3月日本公開)でのお嬢さん(キム・ミニさん)の侍女役がキム・テリさんだと理解した。
その映画を観たときは、お嬢さんと侍女との同性愛の場面でキム・テリさんの方が可愛いと思っただけで調べようとしなかった。
私はご多分に漏れずドラマ『冬のソナタ』で韓流ドラマに興味を持ち、チェ・ジウさんのファンになり、その後キム・テヒさんのファンなる。そのキム・テヒさんが日本進出を図ろうとしていたと思うが(結局断念?)、ネトウヨらが反日女優と攻撃しだした。
私は、「キム・テヒさんが真の反日であれば日本語を学び、日本に来て日本人の男優とキスシーンなどしない」と反論すべく、本ブログ2016年4月号NO.58(「キムテヒ VS キムソヒ」)を掲載した。キム・ソヒさんは元女子プロゴルファー。
一字違いの女優を探しきれなかったので。女優キム・テリさんのことを知っていれば、今回のように表題を『キムテヒ VS キムテリ』にしていたと思う。
7月には、映画館にて、『ハルピン』を観た。初代韓国統監だった伊藤博文(ひとり韓国併合に反対していたが、自身がターゲットとされていることを認識すると暗殺される数か月前には併合案に同意してしまう)を暗殺した安重根の話(扮するはイケメン人気俳優ヒョンビン氏)。
日本にとっては伊藤暗殺を契機に軍部が台頭していき、敗戦へまっしぐらの道を進ことになる。そんな安重根は、日本とってテロリストであり、よく言っても義兵に過ぎない。
しかし、所変われば品変わる。国が変われば評価も変わる。韓国においては安重根は英雄。安重根役のヒョンビン氏も「私たちの映画で安重根将軍と同志たちがどのような辛い逆境にぶち当たっても、一歩一歩信念を持って進んだところ、結局は良い結果を作った。このように今からでも一丸となって一歩踏み出せば、より良い明日があると信じて疑わない」と発言している。子供の頃からそう教えられているし本心からの発言だと思う。万が一、本心でなくともそう言わなければ芸能人として命取りになろう。
大韓民国の建国理念は、抗日闘争の勝利。その抗日闘争のシンボルが安重根であり、多分に美化されていよう。事件当日に既に銃創の位置から別の犯人の存在も示唆されており、他にも陰謀論があるが、真犯人はどうでもよい。象徴にするならある程度知名度ある者の方がふさわしいと言えるか。
人気俳優ヒョンビン氏に対しては、ドラマ『愛の不時着』(2019年12月~2020年2月)で共演の2年後妻となる女優ソン・イェジンさんと最初に共演した映画『ザ・ネゴシエーション 』(2018年公開)をWOWOWで観て初めてその存在を知った。イケメンだけではなく精悍さもあるいい俳優だと感じた。
昨年1月BSJapanext がBS10に変わり、そのBS10で最初に観た韓流ドラマが、若き日のヒョンビン氏主演のドラマ『シークレットガーデン』(2010年制作:最終回本人役でソン・イェジンさんがカメオ出演)。上記『ザ・ネゴシエーション 』(2018年公開)の36歳の彼から28歳の彼を観る私にとっては、役柄も関係しようが、チャラい、重厚感がなく、オーラがないと感じた。韓国の人にとっては彼の若い頃から順に観ており最初からイケメン俳優と人気を博していたのであろうが。
そのドラマの内容に触れる前に、BS10で次に観た韓流ドラマについて少し触れる。それはナムグン・ミン氏がサングラスを掛けた変な弁護士の主人公を演ずる『わずか1000ウオンの弁護士』(2022年制作)。
韓流映画では上述したが、韓流俳優では、韓流ドラマ『ストーブリーグ』(2019年制作)を観て以来ナムグン氏が私の一押し。イケメンなのでカメレオン俳優とは言わないが演技派(韓国では“演技の神”と称せられているとか)で、何を考えているかよくわからない、あるいは得体の知れない役どころを得意としている。そこに惹かれる。その割には本作は最初法曹コメディーかイメージが違うと思ったが、やはり単なるコメディーではなかった。
キャストをみると、弁護士役(主人公の恋人で結ばれる前に殺される)で出演しているイ・チョンハさんとは、『昼と夜』(2020年制作)、『恋人』(2023/MBC)でも共演している。
『復讐代行人』(2021年制作)、 『復讐代行人2』(2023年制作)の主役イ・ジェフン氏が本作の第10話にカメオ出演しているのを観て、びっくりした。調べてナムグン氏も『復讐代行人2』にゲスト出演しているようだ。『復讐代行人2』は全話観ているハズなのに気がつかなかった。
本作『わずか1000ウオンの弁護士』を先に観ている、二人の関係をよく知る韓国の人々はくすくす笑っていただろう。
そう言えばと、私は当時このサングラス姿の男性の登場場面に何の意味があるのかと疑問を抱いたことを思い出した。
ともあれ、共に私が好きな俳優同士が親友なのは喜ばしい。
『シークレットガーデン』は、惹かれあう成年男女において二人の身体と心は入れ替わってしまう。入れ替わりの映画の元祖と言えるのは邦画『転校生』(1982年公開) か。
原作は小学6年生の設定であるが、入れ替わることの動揺、困惑は、思春期の男女でなければと大林監督が中学3年生に設定し直した。実際ヒロイン役の当時17歳の小林聡美さんは4度裸になることに困惑していたという。
それに対して、『シークレットガーデン』では、ヒョンビン氏が28歳で、ヒロイン役のハ・ジウォンさんは32歳。成人同士の入れ替えには無理があると思った。人気スター同士
の役柄では入れ替わった体に関心を持たない設定になってしまうが、それではリアル感がそがれてしまう(そう思うのは助平以上色ボケ未満の爺の私ぐらいか。老いも若きもヒョンビンファンの淑女たちはそんなことに気が回らないか)。
成人同士の入れ替えではR-15にならざるを得ないが、邦画『愛のぬくもり』(2024年公開)では、男が、女の体に変わり、風呂場で女体をチェックする場面が出てくる。その女役を演じるのがグラビア出身の風吹ケイさんであった。
初めてケイさんを知ったが、下記受賞作を読んでケイさんを主役にして映画化してはとの思いに至った。
私は小説、とくに推理小説はあまり読まないが、世界最高峰のミステリー文学賞・ダガー賞〈翻訳部門〉を日本人作家の作品としては初めて王谷晶女史の『ババヤガの夜』(河出書房新社:2020年10月)が選ばれた。それで興味が湧き電子書籍版を購読した。
暴力を唯一の趣味とする主人公新道依子は、ひょんなことから暴力団会長の一人娘を護衛することに。ギクシャクした関係ながら護衛をしている中で父親の会長が娘であるお嬢さんに近親相姦しようとするのを助け、二人で逃避行する。
その過程で作者は女性の男性への変身願望を示唆するが、我々読者は当然170㎝、75キロの主人公依子だと思う。が、作者に上手く騙された。
風吹ケイさんは167㎝ながらもっと大きく見えるので、主人公依子役で。お嬢さん役は清野菜名さんか浜辺美波さんでどうか。物語の前半バイオレンスが激しいのでR-15以上になると思うが是非映画化してもらいたいと思う。
昨今の物価高の世は、銀行を早く辞めたことをもあり低額年金生活者の私にとって、世知辛い。妻の小言が小声でなくなり、無視は得策ではない。少しでも節約の姿勢を見せる。
映画鑑賞は私の数少ない趣味の一つであり、Pontaパスにも加入し少し割引のある月曜日に映画を観ることにした。
週一のTOHO映画館通いは継続していきたいと思う(たまにヒューマントラストシネマ有楽町へ。欧州映画を観る為に)。
今回のアカデミー賞作品賞候補の中では、『ワン・バトル・アフター・アナザー』『ブゴニア』はすでに観ている。今後は日本及び米国アカデミー賞本年度受賞作品及び次年度候補作品を初め、話題作や問題作を中心に鑑賞していきたい。
(次回243号は4/1アップ予定)